米経済にはトランプ政権の関税圧力で「構造的変化」が生じており、市場にとって極端なシナリオが増えるとグッゲンハイム・インベストメンツの最高投資責任者(CIO)アン・ウォルシュ氏はみている。

同氏は9日の電話インタビューで、「テールリスクが際立つようになった」と指摘。テールリスクとは発生確率は低いものの、いったん発生すれば甚大な影響が及ぶリスクだ。

「関税はインフレとリセッション(景気後退)のどちらを招くだろうか。両方だろうとみる人もいる。しかし、私はインフレよりもリセッションにつながる可能性がはるかに高いと思う」と述べた。

トランプ大統領は9日、米国に報復措置を講じていない国・地域に対する上乗せ関税を90日間停止すると発表。中国に対する関税率は125%に引き上げた。これを受け、4営業日続落していたS&P500種株価指数は急反発。投資適格級債や高利回り債が売り浴びせに遭っていた信用市場も回復した。

アン・ウォルシュ氏

しかし、懸念はなお残る。高格付け債の知覚リスクを示す指数は、地銀危機の余波で市場のストレスが高まった2023年に記録した高水準付近にとどまっている。

運用資産3300億ドル(約48兆4000億円)余りのグッゲンハイムは、25年の米経済リセッション入りリスクを35%と予測している。

ウォルシュ氏は、ささいな出来事でこの確率が50%に上がり得ると分析。トランプ氏による製造業回帰の取り組みは、レーガン政権以来の全面的な米市場再編成を示唆しているとの見方を示した。

また、グッゲンハイムは様子をうかがうため、「アンダーウエート」としている一部分野の証券を購入し始めているが、より大きなチャンスを狙っているとし、「ファンダメンタルズの裏付けがない大幅な社債スプレッド拡大や、テクニカル要因による大量売りが見られた場合、われわれは大きな取引に出るだろう」と語った。

ウォルシュ氏は今年の米利下げ回数を2回ないし3回と予想。また米10年国債利回りは3%台半ばから4%台後半のレンジにとどまるとみているものの、「それを変え得るのは深刻なリセッションだ。われわれの基本シナリオにはないが起こる可能性がある」と話した。

原題:Guggenheim’s Walsh Says Tail Risk Going to Extremes in Trade War(抜粋)

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