(ブルームバーグ):米大統領選直後、親ビジネスとみられるトランプ大統領への期待にウォール街が沸いていた頃、BCAリサーチのチーフ・グローバル・ストラテジスト、ピーター・ベレジン氏は警鐘を鳴らしていた。
ベレジン氏のチームは昨年12月、第2次トランプ政権では一方的に広範な関税が導入され、第1次政権を上回る規模になるとみていた。相互関税の発表を受けた今週の金融市場の動揺は、ベレジン氏に先見の明があったことを示している。この先の予想についても同氏が正しいとすれば、米国株はまだ底入れから程遠いことになる。
S&P500種株価指数については、年末までに4450まで下落すると同氏は予想。これは現在の水準を約18%下回る。一方で、原油価格は「需要の減少」という悪い理由によって、現在の1バレル=約63ドルから50ドルに下がり得ると述べた。
米国は早ければ4-6月(第2四半期)にもリセッション(景気後退)に陥る可能性があると同氏は話す。米経済はすでに今年に入る前から弱含んでおり、具体的には、求人件数の減少、コロナ禍の貯蓄枯渇、空室率の上昇、自動車ローンや学生ローンの延滞増加といった兆候に表れていたという。そこにトランプ氏による関税拡大が「とどめを刺す」と同氏はみている。

「リセッションは経済が脆弱(ぜいじゃく)になり、その後にショックが加わることで起こる傾向がある」とベレジン氏。「状況は良くなるどころか、むしろ悪化する。今後は報復が起こり、貿易戦争は激化する」と続けた。同氏はリセッションに陥る確率を75%とみている。
ウォール街は年初の段階で、米国株と米経済に強気だった。当時ブルームバーグが調査した19人のストラテジストのうち、S&P500種が6000を割り込むとの予想はゼロだった。
ベレジン氏はまた、トランプ政権が財源の裏付けのない減税を実施するかもしれないとし、今後数カ月にわたり米国債利回りは高止まりする可能性があると述べた。
「我々は目下、極めて悲惨な負の連鎖に陥る瀬戸際にある。雇用見通しへの不安が買い控えを招くという自己実現的な悪循環だ」とベレジン氏は説明。「消費が落ち込めば、企業は採用を控え、雇用が減少。所得が減って、さらに支出が減るという流れになる」と続けた。
原題:Chief Strategist Who Foresaw Tariff Shock Says Worst Yet to Come(抜粋)
--取材協力:Sam Potter.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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