(ブルームバーグ):ヘッジファンドの活発な取引が投資銀行に恩恵をもたらしてきたが、それが突然終わるかもしれない。大手ヘッジファンドは「静観」に傾いている。
トレーダーたちは、トランプ米大統領が市場に与える衝撃を予測しようとするのを諦めて事態を静観した方がよいのではないかと議論している。
匿名で語ったヘッジファンド運用者は、混乱とリスクがあまりに大きく、今日行った取引が明日には崩壊することがあり得るほどだと述べた。この運用者は1日に3時間しか眠っていないという。
積極的に取引する運用者の撤退は、広範な影響を及ぼし得る。銀行やその他のマーケットメーカーにとっては、ボラティリティーが追い風から逆風に転じかねない。買い手不足になればマーケットメーカーは値下がりした資産を抱える羽目になる。
トランプ氏が米国の貿易相手国に対して100年で最大の関税引き上げを突き付けた後、一部ヘッジファンドのシニア運用者は、関税引き下げが実施された場合、それが次の大きな取引機会になるという結論に達したと、ヘッジファンド運用者の考えに詳しい関係者が述べた。
しかし、運用者らもそうした事態が起こるかどうかの予測がつかないため、現時点ではリスク軽減に重点を置くのが賢明だと考えているという。
チューリヒを拠点にヘッジファンドに投資するアーレン・キャピタル・マネジメントのマネジングパートナー、ブルーノ・シュネラー氏は「運用者らは明確にリスク管理に軸足を移している。グロスおよびネットのエクスポージャーを減らし、現金を増やしている」と述べた。
ここ数週間にトランプ大統領の公の発言を解釈しようとして失敗し、その後に続く政策に備えたポジションを取れずに損失を被ったことで、多くの運用者の自信は揺らいでいる。
ミレニアム・マネジメント、シタデル、バリアズニー・アセット・マネジメントなどの強力なヘッジファンドが、関税騒動が本格化する中で3月に打撃を受けた。
あるヘッジファンドの幹部は、自社を含め多くのヘッジファンド会社で投資会議は2つの陣営に分かれていると述べた。半分は、現在の混乱は短期的なもので、トランプ氏が間もなく関税引き下げの圧力に屈すると予測。残りの半分は、同氏が現在の政策を貫くと考えている。
一部のファンドでは、最高投資責任者レベルにまで混乱が及んでいる。その下にいるトレーダーたちは、予測不可能な人物1人に価格変動が左右されるという、かつて経験したことのない異常な市場環境で、どうやって運用すべきか悩んでいる。
「市場が政策だけでなく、政策を発表する個人に対してもも反応する場合は常に厄介だ」とシュネラー氏は述べた。トレーダーはファンダメンタルズを分析する代わりに、トランプ氏の衝動を予測しなければならない。
トランプ氏が「政治と市場の圧力によって高関税を撤回することを余儀なくされるか、それとも強さを示すためにさらに進めるかを予測しろと言われても無理」なため、「当社が話を聞いた運用者の大半は、機敏に動けるように準備し、ヘッドラインリスクのみに基づいて方向性を予測する賭けを避けようとしている」と同氏は話した。
ヘッジファンドは大胆な新しい賭けはせず、ヘッジ戦略に大半の時間を費やし、古いポジションのレバレッジを解消し、現金を蓄えていると、事情に詳しい関係者が述べた。ある業界幹部によると、4月の損失を回避し「プラスマイナスゼロ」で終わることが、今や目標だという。
このような時期は、ポートフォリオマネジャーにとっての悪夢となりかねない。顧客から引き出し限度額まで資金を引き出したいという相談を受ける可能性もある。
また、人材あっせん業者は顧客のヘッジファンドから、「追って通知するまでは採用を全て停止したい」という連絡を受けたという。
原題:Hedge Funds Frazzled by Tariff Chaos Contemplate Sitting It Out(抜粋)
(最終2段落を追加します)
--取材協力:Sonali Basak、Katherine Burton、Silla Brush、Todd Gillespie.
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