(ブルームバーグ):4日の日本市場はトランプ米大統領の関税政策による世界経済への影響が引き続き懸念され、安全資産へのマネー逃避が鮮明になった。債券が買われて長期金利が急低下、株価は連日の大幅安となった。
長期金利は前日を超える低下幅で約3カ月ぶりの水準に下がった。安全資産需要に加えて米国の関税が世界経済を悪化させ、日本銀行の利上げが先送りになるとの見方が出ている。金利低下で銀行を中心に株式は大幅続落、東証株価指数(TOPIX)は一時5%超下落した。円相場は一時145円台前半まで上昇した。
日本を起点に欧米の金融市場で進んだマネーのリスク回避が止まらない。日本はトランプ関税の影響を最初に織り込んだが、米国の経済・物価動向や日銀の金融政策への影響を含めて不透明感が拭えない。トランプ大統領は市場の反応を順調と評価しており、今夜の米雇用統計発表を前にリスクを取りにくい状況だ。
みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは4日付リポートでトランプ関税の影響として、まずは米国の景気悪化とインフレ加速が想定されると指摘した。その上で日銀は追加利上げ機会を模索する可能性が高いとしながら、ドル・円相場が円高方向にシフトすれば利上げが困難になると予想した。
債券
債券相場は大幅上昇。長期金利は一時約3カ月ぶりの低水準を付けた。米国のトランプ政権が発表した関税政策が市場想定よりも強硬で景気悪化懸念からリスク回避の債券買いが強まった。
りそなアセットマネジメントの藤原貴志債券運用部長兼チーフファンドマネジャーは、リスク資産の下落で金利低下が進み、日銀の7月利上げを放棄するような織り込みだと指摘した。市場が落ち着き始めれば合理的な水準に収れんしていくだろうとしながら「トランプ関税の影響は時間をかけて見ていく必要があり、すぐに金利が急上昇することはない」と述べた。
三菱UFJアセットマネジメント債券運用第二部の小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャーは、3月下旬まで日銀利上げを織り込む動きが続いたのに対して、期初の買いと関税策は実体経済に直接影響を及ぼすということで強い買い戻し圧力になっていると述べた。
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株式
東京株式相場は大幅安。米国の相互関税や各国の報復関税による景気懸念で昨日の米国株が急落したことや為替の円高基調を受け、リスク回避の売りが継続した。
TOPIXは3月27日の高値から10%超下落して調整局面入りした。東証プライム概算売買代金は6兆8414億円と昨年10月以来の大商いになった。
アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは、関税政策を巡る交渉余地の有無や企業への影響が読めない中で「なかなか前向きなポジションは取りづらく、リスク回避姿勢が続いている」と話す。以前から内需へのエクスポージャーを外需より高くしていたが、想定より高い関税率を受けてより内需に傾斜したと語った。
金利低下が逆風となる銀行や保険など金融株、海外原油先物安を受けた鉱業や石油・石炭製品株の下げが大きかった。自動車や電機など輸出関連、非鉄金属やゴム製品といった海外景気敏感業種も売られた。半面、陸運など内需関連株の一角は堅調だった。
為替
東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=145円台前半に上昇。トランプ米大統領の相互関税発表を受けた株安の進行でリスク回避の円買いが強まった。米長期金利が時間外取引で4%を下回って低下していることもドル売り・円買いを促した。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、日本時間夜に発表される米雇用統計とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を受けてドル売り機運がどこまで和らぐか注目としながらも、「米景気減速への警戒感は簡単には払拭しづらく、株安継続でリスクオフの流れも続きやすい」と述べた。
日銀の植田和男総裁は4日、米関税政策は内外経済の下押し要因になるとした上で、外部環境の変化に伴う見通しの修正に合わせて適切に政策対応を行う考えを示した。野村証券の後藤氏は、「今は利上げのタイミングが遅れる方向に市場が動きやすい」との見方を示した。
外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、リスク回避の円買いと米金利低下によるドル売りの両面が影響していると指摘。「相互関税発表を起点に世界景気悪化懸念が強まり、株の大幅安が続いている上、米長期金利の4%割れは米国が課した関税が一周まわって米自身の景気を下押しするとの懸念も強いだろう」と述べた。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:山中英典、船曳三郎、我妻綾、横山桃花.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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