(ブルームバーグ):マッチ・グループの出会い系アプリ「ティンダー」は、人工知能(AI)搭載のチャットボットとユーザーが会話を楽しむアプリ内ゲームを発表した。ウェブサイトやアプリを継続的に利用する度合いである「ユーザーエンゲージメント」を高めることで、アプリの成長を取り戻そうという取り組みの一環だ。
無料の音声ベースのゲームは、実現可能性や効果を検証するコンセプト実証とマーケティングの双方の要素を兼ね備えている。オープンAIの「GPT-4o」および「GPT-4o mini」モデルを使用して、短いロマンチックコメディーの出来過ぎたシナリオを生成する。例えば、スーパーで知らない人が同じ買い物かごに手を伸ばしたり、空港の荷物受取所で誰かの荷物が自分の荷物と入れ替わったりするようなシナリオだ。
シナリオの中でボットと会話することで、ユーザーは「親切さ」や「好奇心」のポイントをためたり、自分の言葉に対するリアルタイムのフィードバックを受けたりする。最終的にAIキャラクターがデートに同意すれば「ゲームに勝った」ことになる。 1日5回まで、1回当たり約3分間プレーできる。 今のところ、この機能は米国でアップルの基本ソフト「iOS」を使用するユーザーを対象に期間限定で提供されている。
「楽しくてあまり考える必要のない空間を提供し、ユーザーが現実世界の会話に踏み出す前に、実験や場合によっては少し自信をつける機会を与えることが目的だ」と、ティンダーの製品、成長、収入担当副社長ヒラリー・ペイン氏は述べた。この機能がティンダーアプリに恒久的に残るかどうかは、ユーザーからのフィードバック次第だという。
ティンダーは、ユーザー層の約半分を占めるZ世代のユーザーの獲得を優先課題としている。マッチ・グループのポートフォリオの中で最大のアプリであるティンダーは、2023年に始まった加入者減に歯止めをかけるのに苦労しており、ブランド収益は27年まで成長に転じないとの見通しを投資家に示している。
同社はエンゲージメントを高める策の一つとして、「ティンダーに楽しさを取り戻す」ことと、偽プロフィルや悪質なユーザーをシステムから排除することを挙げている。
アプリ内チャットボットは「ザ・ゲーム・ゲーム」と呼ばれている。ティンダーはAIコンパニオンの導入までは考えていない。AIを無制限に使用すると、人の感情的な健康に悪影響を及ぼす可能性があると報告されているため、AIコンパニオンは物議を醸している。
このゲームの期間限定かつ非現実的な設定は、「体験を軽く保ち、過度な依存を防ぐ」ことを目的としているとペイン氏は説明。ゲーム機能は「テクノロジーが本物らしさを置き換えるのではなく、どう支援できるか」を示すための実験だとも述べた。
ティンダーは、ヘイトスピーチやコミュニティーガイドライン違反の検出に加わる安全対策として、オープンAIのコンテンツ監視(モデレーション)技術を使用してセンシティブな話題や不快な誘いを含んだ会話を終了させる機能も盛り込んだ。
原題:Tinder Unveils Playful AI Chatbots in Bid to Boost Engagement(抜粋)
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