日本株市場で相対的に低価格な商品やサービスを提供する銘柄のパフォーマンスが良好だ。賃上げや所得税が免除される「103万円の壁」引き上げに伴い、家計の所得が増えると予想されるためだ。

外食チェーンのすかいらーくホールディングスや酒類をディスカウント販売するカクヤスグループの株価は年初来で10%以上上昇している。東証株価指数(TOPIX)の1.2%安やTOPIX小売業指数の4.9%安と対照的な動きだ。

石破政権は企業に対して物価高に負けない賃上げの定着を要請しており、帝国データバンクの調査によると、2025年度に賃金改善を見込む企業は過去最高の62%に達した。日本労働組合総連合会(連合)は6日、今年の春闘の賃上げ要求が32年ぶりに6%を超えたと発表。昨年は1991年以来の高水準で妥結し、12月の名目賃金は97年1月以来の大幅な伸びとなっていた。

シンガポール拠点のフィンテック企業iファストのポートフォリオマネジャー、ホイ・シー・イェオ氏は、賃金上昇に伴い生活必需品への支出は堅調に推移し、「旅行や娯楽分野も鬱積(うっせき)した消費需要の恩恵を受ける可能性が高い」と予想している。一方、生活費の上昇が続く中で不動産など高額商品の回復は「より緩やかなものになる」と言う。

英調査会社ペラム・スミザーズ・アソシエイツの寺田寛之シニアアナリストは、賃上げによる消費者の購買力向上は低価格ファッションやスーパーマーケット、リサイクルショップなどの運営企業の株価上昇につながるとみる。

実際に今年、トレジャー・ファクトリーや「セカンドストリート」を運営するゲオホールディングスの株価はTOPIXを上回るパフォーマンスを見せている。 ゲオHDは今期(2025年3月期)第3四半期の中古衣料・服飾雑貨の売り上げ総利益が17%増えた。同社は物価高騰に伴う生活防衛策としての需要の高まりなどで、中古品購入が「身近なライフスタイル」に変化しているとの考えを示す。

「壁」引き上げ

寺田氏は政府が非課税所得上限を103万円から160万円に引き上げる計画も、若者やパートタイム労働者の懐を潤すと指摘する。この改革案を盛り込んだ25年度予算案は今週、衆院を通過した。

「103万円の壁」引き上げは「労働力不足の緩和に役立ち、企業がコストをかけて人材紹介サービスに頼らずに済むようになる」と寺田氏。パートタイム従業員に頼る飲食業などの企業は働き手が増えることで営業時間を延長でき、より多くの客を集められるため、税制改革がもたらす利益は特に大きいとの見方を示した。

もっとも、インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは、食品価格の上昇が実質賃金の伸びを圧迫し、短期的に消費を抑制するリスクがあると話す。ただ、生鮮食品を除くコアの消費者物価指数(CPI)はある程度安定しているため、時間の経過とともにインフレ率は低下していくと予想。4月以降、春闘での賃上げが実際に「反映されれば内需への懸念は減り、株価に押し上げ圧力が働いていく」と述べた。

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