(ブルームバーグ):6日の日本市場では債券が大幅安。長期金利は約16年ぶりの1.5%台に上昇した。ドイツ国債が財政拡大懸念から急落したことが背景。株式は欧州景気の浮揚期待から続伸。円相場は1ドル=148円台半ばに上昇した。
新発10年債利回りが1.515%と2009年6月以来の高水準を付けたほか、新発40年債利回りは一時前日比15ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い2.895%と07年の発行開始以来の最高水準を更新した。利回りの大幅上昇により30年国債の入札は堅調な結果になったが、債券相場自体の戻りは鈍かった。
独10年国債利回りは5日に一時31bp高い2.80%程度と、1日の変動幅としてはベルリンの壁崩壊後にドイツ再統一への準備が進められていた90年3月以来の大幅上昇となった。次期首相就任が確実視されるメルツ氏が防衛力強化のための大胆な財政改革案を提示。欧州ではロシアによる侵略の脅威に対抗するため、トランプ米政権が安全保障への関与を大きく後退させていることを補う必要が高まっている。
ファイブスター投信投資顧問の下村英生シニアポートフォリオマネジャーは、欧州について「財政が拡大する上、景気が爆発的に良くなる可能性を市場が今織り込み始めている」と指摘。欧米は経済や防衛政策の歴史的な転換点にあるとして、「その方向性を見極めない限り、債券に強気になってはいけない」と述べた。
債券
債券相場は大幅下落。ドイツを起点とした欧米の金利上昇がアジアの債券市場にも波及した。30年国債入札の結果を受けて超長期債を中心に買い戻しが入ったが、その後再び売りが強まった。
アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎債券ストラテジストは、日本も財政拡大による長期金利の上振れを想定せざるを得なくなってきたと指摘。大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストは、今後も海外金利の動向が注視される上、国債入札も続くため、「債券は値動きの荒い相場は続く」と警戒する。
一方、明治安田生命保険の北村乾一郎運用企画部長は、新発10年国債利回りが1.5%、新発30年債利回りが2.5%まで上昇したことは短期的に行き過ぎとの見方を示した上で、「年度末が近いため、多くの投資家が買うのは新年度に入ってからだろう」と述べた。
この日行われた30年債の入札結果は、最低落札価格が96円45銭と市場予想(96円40銭)を上回った。大きいと低調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は12銭と前回7銭から拡大。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.50倍と前回の3.74倍から低下した。
新発国債利回り(午後3時時点)
株式
東京株式相場は電機や機械など輸出関連株中心に上昇。米トランプ政権が対メキシコ、カナダ関税のうち自動車について1カ月間の適用除外を明らかにしたことを受け、自動車株にも買いが入った。金利上昇による収益拡大期待から銀行株も高い。
ドイツが防衛力強化のために財政緊縮路線から転換する計画を打ち出すなど、欧州各国で財政支出が増え、経済成長が促されるとの観測が強まっている。中国が5日に25年の経済成長率目標を約5%としたことで、同国のさらなる刺激策への期待も高まった。
アセットマネジメントOneの浅岡均シニアストラテジストは、輸出関連企業にとって、米国以外の地域で明らかな財政拡大傾向が見られことは経済見通しの改善につながると話した。
マキタなどの欧州関連株、三菱重工業などの防衛関連株が大幅上昇。個別では、大規模な自己株取得を実施する方向で調整しているとブルームバーグが報じたセブン&アイ・ホールディングスの株価が午後に急伸した。
外国為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=148円台半ばに上昇。日中は輸入企業などの円売りが指摘される中で、149円台前半で推移していたが、午後に買いが強まった。
ユーロは対ドルで一時1ユーロ=1.0820ドルと昨年11月上旬以来の水準に上昇。大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、市場の関心はユーロ・ドル相場に向かっているとして、ユーロが対ドルで上昇すると円もその動きにつれて対ドルで上昇していると説明した。
日本最大の労働組合の全国組織である連合は6日、25年春闘の賃上げ要求が6%を超えたと発表した。32年ぶりに6%を上回った。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、連合の要求は昨年並みか下回るとの見方があったため、昨年を上回ったことを受けて円が買われていると指摘。日本国債先物も夜間取引で売られており、金利上昇をさらに促進する材料だと述べた。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:Masaki Kondo、我妻綾、日高正裕、山中英典.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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