(ブルームバーグ):トランプ米大統領は、ウクライナに対する全ての軍事支援の一時停止を命じた。ゼレンスキー大統領との米大統領執務室での会談が口論に発展し、米国による支援の先行きが不透明となっていた。
国防総省の高官によると、ウクライナ首脳らが和平への誠実なコミットメントを示しているとトランプ大統領が判断するまで、米国はウクライナへの軍事支援を停止する。同高官が非公開情報だとして匿名を条件に明らかにした。また、トランプ政権は紛争の解決に寄与しているか確認するため、対ウクライナ支援を精査する方針だと、ホワイトハウス当局者が話した。
この影響は兵器や医薬品の拠点として機能していた、ポーランドのウクライナ国境に近い主要空港で早くも表れた。
ポーランドのトゥスク首相は「当然ながら、これでウクライナとポーランドは難しい状況に追い込まれる。だが、この状況に対処するしかない。この現実に腹を立てても仕方がない」と発表文で説明した。
今回の命令は航空機や船舶で輸送中、あるいはポーランドの中継地で待機中の武器を含め、現在ウクライナ国内にない全ての米軍装備品に適用される。影響を受ける兵器の範囲は現時点で不明だが、トランプ氏は米国の備蓄から38億5000万ドル(約5740億円)相当の兵器を引き渡す権限をバイデン前大統領から引き継いでいた。
ロシアによるウクライナ侵攻で始まった戦争を終結させるため、トランプ大統領は早期の合意を熱望している。だが、2月28日に開かれた首脳会談でゼレンスキー氏は、ロシアがいかなる合意にも違反しないよう安全保障の確約を要求。これにトランプ氏は、和平の準備ができたら戻って来いと突き放した。停戦につながり得る前兆とみられていた鉱物資源協定の調印も両者は取りやめた。
これを受け、欧州の同盟国はウクライナに武器を供給し続け、停戦後の平和維持部隊の派遣に向けた計画の策定を急いでいる。しかし、欧州には米国が現在提供している武器やその他の能力などの多くが欠けており、当局者は武器の供給は夏までしか続かない公算が大きいと話している。
トランプ大統領による今回の動きは、両国の緊張緩和に向けた期待を後退させるものだ。トランプ氏は3日、ウクライナとの鉱物協定に署名する可能性を残し、欧州の指導者らも立て直しに期待感を示していた。
ポーランド外務省によると、トランプ氏の軍事支援停止指示を欧州の同盟国は知らされておらず、寝耳に水だった。ここ数日、トランプ政権の閣僚と電話で頻繁にやり取りしていた英国の政府高官も、3日遅くの時点で支援停止を関知していなかった。
ウクライナの議会国家安全保障・防衛委員会は米国の軍事支援停止を協議するため非公開の協議を行った。ベニスラフスキー議員が明らかにしたとして、同国のRBCウクライナが報じた。主な課題は、米国が供給していた防空システムや、長距離精密兵器の代替手段を見いだすことだと、同議員は述べたという。
また、ウクライナのシュミハリ首相は4日、同国は米国との協力を続ける意思を「固めている」とし、パートナーシップを維持し、その方法を見いだすことは重要だとキーウで記者団に説明。和平交渉でロシアに領土で譲歩することはないとも語った。

「実に前向き」
一方で、ロシアのプーチン大統領に現実的な和平案を交渉する真剣な意思はないと、欧州当局者は指摘した。プーチン氏にとってウクライナの中立化は譲れず、西側諸国の軍によるウクライナ駐留を同氏が容認するのかは判然としない。これについて、トランプ氏はプーチン氏への信頼を口にしている。和平の条件を巡り、米国とウクライナ、欧州がどのように合意できるのかも明らかではないという。
ロシア大統領府は、トランプ政権の支援停止支持がウクライナに交渉を促す可能性があると期待を表明。「われわれにはまだ詳細が分からないが、これが事実であれば、実に前向きかもしれない決定だ」と、ペスコフ大統領府報道官は語った。同報道官の発言はインタファクス通信が報じた。米国の対ロシア制裁が緩和される可能性について話すのは時期尚早だとも述べたという。
ホワイトハウスでゼレンスキー氏との激しい応酬に先週加わったバンス米副大統領は3日夜、FOXニュースのショーン・ハニティー氏とのインタビューで、「ロシア側は何かを諦めなければならない。ウクライナ側も何かを諦めなければならないだろう」と述べた。さらに、「彼らに和平交渉の用意があるなら、トランプ大統領は真っ先に電話を取ると思う」と付け加えた。
スターマー英首相とフランスのマクロン大統領は、トランプ氏に提示する一時停戦案の作成を進めており、長期的な和平プランに向けて具体的な協議を開始する環境を整備したい考えだ。直感のようなものでなく、支援の一時停止はトランプ大統領の計算の一部である可能性もある。ただ、バンス氏はFOXとのインタビューで、欧州諸国によるウクライナへの軍派遣計画に否定的な見解を示した。
英仏はゼレンスキー氏に対し、トランプ大統領との関係修復を内々に促し、和平を巡る取引にトランプ氏がなおコミットしていると信じていると、関係者らは話した。欧州諸国はゼレンスキー氏がトランプ氏にへつらう必要があるだろうとし、単なる謝罪では十分ではない公算が大きいとみていると、関係者の1人が述べた。
米外交問題評議会(CFR)のフェロー、トーマス・グラハム氏は「この議論全体の問題は、ロシアをどう交渉の席に着かせ、ロシアに最大限の目標からどう譲歩させるのか、現時点で誰も話していないことだ」と指摘。「いかなる類いの取引、いかなる類いの停戦からも、まだまだ遠いと自分は考えている」と語った。
ゼレンスキー氏はトランプ氏と再会談する意思はあると表明しつつ、トランプ氏が「真剣な」話し合いを行うため訪米を要請することが条件だとくぎを刺した。
米共和党のマイク・ローラー下院議員はX(旧ツイッター)で、「ウクライナへの支援を止めれば、欧州と自由世界の安定が脅かされる」と投稿。「この問題については双方に強い意見があり、私はそれを尊重するが、われわれは大局を現実的に捉え、海外における米国の利益を守らなければならない」と訴えた。
原題:Trump Pauses Military Aid for Ukraine to Squeeze Zelenskiy (2)(抜粋)
(第3-4段落にポーランドの状況を、第11段落にウクライナ首相のコメントをそれぞれ挿入します)
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