(ブルームバーグ):金融庁の屋敷利紀総合政策局長は、一部地方銀行で残高が増加している国債などを裏付けとしたJGB(国債)リパッケージローンと呼ばれる仕組み貸し出しについて、リスク管理や開示などで「大いに疑問に感じている」として、ガバナンス態勢などについて立ち入り検査も活用しながら検証していく方針を示した。
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ー問題意識
「仕組み貸し出しの問題点については、昨年1月の地銀協、第二地銀協との意見交換会で、監督局長から注意喚起している。それ以降も、新たに仕組み貸し出しに取り組んだ地域銀行や残高を大きく増やしている地域銀行が存在していることについて、金融庁は強い問題意識を持っている」
「JGBリパッケージローンなど地域銀行の仕組み貸し出しについて、リスク管理、ディスクロージャー、経営理念などの3点において大いに疑問に感じている。また、アレンジャーである証券会社や受託者である信託銀行の取り組み姿勢も確認しなければならないと考えている」
ーリスク
「上限金利を定めているローンや固定金利型ローンの場合、金利上昇時に地域銀行で逆ザヤが生じるリスクがある。他方、スキーム上JGBを保有しない地域銀行は、金利低下時に売却しても実現益を得ることができない」
「コスト、リスク・リターンの観点からは、リパッケージに要する手数料や信託報酬が生じるためJGB、スワップ、オプションをそれぞれ契約するよりも地域銀行が得る収入は低下する。金利動向次第では、中途解約時に含み損が顕在化するが、JGBリパッケージローンは流動性に乏しいため、売却に時間を要するだけでなく、損失額は含み損以上に拡大する」
ーディスクロージャー
「JGBリパッケージローンは、実質的には債券投資であるにもかかわらず、現行のディスクロージャー上は時価評価の対象とはならない。また、金融仲介機能を一切発揮していないにもかかわらず、現行のディスクロージャー上は貸し出しに分類される」
「現状の制度がそうなっているからと言えばそれまでだが、制度の盲点を突いて、実質的には債券投資にもかかわらず時価評価を回避するために、貸し出しが増加していると見せるために仕組み貸し出しに取り組んでいるとすれば、それはディスクロージャー本来の趣旨に反する行為ではないか」
「仕組み貸し出しのディスクロージャーの在り方については、今後、銀行業界と議論していきたいと考えている」
ー検証へ
「特に昨年1月に監督局長が地銀協、第二地銀協との意見交換会で注意喚起して以降、新規に実行した先や残高を大きく増やした先などを中心に、コストとリスク・リターンを含めた入り口審査、公正価値の把握を含めた中間管理、ストレス時対応をはじめとするリスク管理の実態、ディスクロージャーの考え方、仕組み貸し出しと経営理念との関係などのほか、経営陣の関与や取締役会の機能を含めた全体的なガバナンス態勢、1線、2線、3線の全体的な有効性などについて、立ち入り検査も活用しながら検証する方針だ」
ー証券会社、信託銀行に対して
「アレンジャーである証券会社の取り組み姿勢も確認しなければならないと考えている。昨年1月以降も仕組み貸し出しを積極的に提案している証券会社を中心に、プロダクトガバナンス態勢や仕組み貸し出しを提案する際は、手数料を含めたコスト・リターンやリスク・リターンを開示しているか、パッケージ化しない場合と比較して説明しているかなど販売・管理態勢のほか、必要に応じて経営陣の関与や取締役会の機能を含めた全体的なガバナンス態勢、1線、2線、3線の全体的な有効性などについて重点的にモニタリングする」
「受託者である信託銀行の取り組み姿勢も確認しなければならない。仕組み貸し出しの受託残高が大きい信託銀行では、誠実さや公共的使命を経営理念に掲げている。そうであれば、時価評価を回避することや貸し出しが増加していると見せることを求める地域銀行向けの商品として、信託銀行が仕組み貸し出しを受託することが誠実性や公共的使命の観点から適切なのか疑問に思う」
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