米紙ワシントン・ポスト(WP)のオーナーである資産家ジェフ・ベゾス氏は、同紙のオピニオン欄の編集方針を変更する。今後は、同氏が柱とする「個人の自由」と「自由市場」への支持に反対する意見は掲載しないとした。

ベゾス氏は26日、X(旧ツイッター)への投稿で今回の方針変更を発表。WP紙のオピニオン欄編集長であるデービッド・シップリー氏の辞任も明らかにした。シップリー氏は、米誌ニューリパブリックと米紙ニューヨーク・タイムズ、ブルームバーグ・ニュースでの勤務を経て、2022年にWP紙に入社した。

ベゾス氏は、「われわれは個人の自由と自由市場という2つの柱を支持し、擁護するために毎日執筆していくことになる」と説明。「もちろん他のトピックもカバーしていくが、これらの柱に反対する意見は他の媒体に掲載を委ねることになるだろう」とした。

ベゾス氏は、シップリー氏にこの新たなビジョンを率いる機会を提供したが、同氏は「熟考の末、辞職することを決めた」と説明した。

13年にWP紙を買収して以降、ベゾス氏は最近まで編集方針にほとんど介入してこなかった。アマゾン・ドット・コムの創業者であるベゾス氏は、ドナルド・トランプ氏とは10年近く前から対立関係にあったが、トランプ政権下では同氏に対する批判をかなり抑えている。

WP紙は昨年10月、米大統領選挙で特定の候補者への支持を表明しない方針を発表。当初は、民主党候補で当時副大統領だったカマラ・ハリス氏を支持する草稿を準備していた。WP紙のスタッフが加盟する労働組合は、ベゾス氏が掲載見送りの決定を下したとの見解を表明した。

この決定は同紙の内外で批判の嵐を巻き起こし、複数の編集者やライターが辞職。購読者の8%に相当する最大20万人が解約したと、米公共ラジオNPRが伝えた。

連邦政府との契約に依存

世界2位の資産家であるベゾス氏は、クラウドコンピューティングサービスや自身の宇宙ベンチャー企業ブルーオリジンなど、連邦政府との大規模契約に依存する事業を展開している。WP紙で編集主幹を務めていたマーティ・バロン氏は、アマゾンがトランプ氏の就任基金に寄付し、メラニア大統領夫人に関する「いわゆるドキュメンタリーの権利に法外な金額」を支払ったと指摘した。

バロン氏は今回の方針変更について、ベゾス氏は「ワシントン・ポストよりも商業的な利益を優先しており、そうすることで同紙の長年の原則に背いている」と述べた。

WP紙のホワイトハウス担当経済記者であるジェフ・スタイン氏は、ベゾス氏による方針変更について、同紙のオピニオン欄への「重大な侵害」だとの見解を示した。

スタイン氏はXへの投稿で、「ニュース報道の面でジャーナリズムへの侵害を感じたことはまだないが、もしベゾス氏が報道面に介入しようとするならば、私は即座に辞職し、それをお知らせするだろう」とした。

原題:Washington Post Opinion Editor Quits Over Bezos Changes (1)(抜粋)

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