中国のテクノロジー業界を混乱に陥れた規制強化策が打ち出されてから4年余りを経て、共産党の習近平総書記(国家主席)が国内テクノロジー企業の経営幹部と座談会を開いた。

中国トップの習氏が異例の行動に出たことで、トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争に反撃するため、習指導部が民間セクターにより自由な行動を認める方向にかじを切るのではないかという期待が高まっている。

習氏は17日、当局によるハイテク企業締め付けの標的となっていたアリババグループ共同創業者の馬雲(ジャック・マー)氏らと公の場で会談。

座談会には他にも米国の輸出規制にもかかわらず世界トップクラスのイノベーションを展開しているロボットスタートアップの宇樹科技(Unitree)や電気自動車(EV)の中国最大手、比亜迪(BYD)、人工知能(AI)スタートアップDeepSeek(ディープシーク)といった企業の幹部らが招かれた。

アリババのジャック・マー氏は著名起業家の一人として習主席との座談会に出席

モルガン・スタンレーの邢自強チーフエコノミスト(中国担当)は、「経済および地政学的な逆風の中で中国政府は民間セクターを国家の競争力を支える柱として再配置しようとしている」と分析。

「規制強化が間もなく終わるという兆しはあったが、注目度の高いビジネスリーダーの表舞台への復帰は、規制の再設定が完了したことを示す最初の明確な兆候であるとわれわれは考えている」と述べた。

慎重な政策支援への道が開かれると見込む邢氏だが、企業の信頼感回復を持続させるためには消費重視の措置が依然として必要だとの見方も示した。

ハイテク主導

習指導部はトランプ政権との再度の貿易戦争に備え、輸出を数年前より強化し、国内消費の低迷を食い止めようと経済の強化を図っている。

そうした中でディープシークが示したAI分野における画期的な進歩は、政府による景気刺激策なしに中国本土・オフショア株式市場で1兆3000億ドル(約198兆円)相当の株高をもたらした。

ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の朱懌エコノミストはリポートで、「信頼感の低下に苦しむ経済にとって、これは強力な薬だ」と指摘し、座談会に「不動産王の姿はなく、テクノロジー企業の経営者が大半を占めていた」と言及。

「政策当局は経済を不動産開発からハイテク主導へと移行させることにこれまで以上に重点を置いているようだ」と論じた。

習氏が貿易戦争をどのように乗り切るつもりなのか、その一端が3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)でさらに明らかになる。

中国政府は全人代で、経済成長率を年5%前後とする目標を発表するとみられている。政策当局はデフレ長期化への懸念や、中国の輸出に対する米国だけでなく友好国からの反感の高まりといった課題にも直面。ブルームバーグ調査では、今年の経済成長率は4.5%と予想されている。

「習氏はトランプ氏に対し、あなたにはイーロン・マスク氏がいるかもしれないが、中国にも強力なテクノロジーリーダーがいるというメッセージを送っている」とビジネス・政策コンサルティング会社アジア・グループでデジタルプラクティス共同責任者を務めるジョージ・チェン氏はみている。

ただ、国営メディアは座談会を報じる際、出席した企業幹部を主に背後から映し、焦点は習氏に絞られていた。

国家による企業への介入が終わっていないことを示す兆候として、関係者によると、中国版「インスタグラム」と呼ばれる小紅書を巡り、中国当局は政府系の投資家に出資を促し、将来の上場承認がスムーズにいくよう取り組む可能性があると非公式に示唆している。

オックスフォード大学中国センターのリサーチアソシエート、ジョージ・マグナス氏によれば、「企業に対する習氏の一貫したメッセージは、民間企業が成長を望むのであれば、党の主張に賛同し、そのプログラムや指令を実行する必要がある」というもの。

「党が全てを主導する国家においては、民間企業が直面する限界も思い知らされる」と同氏は語った。

原題:Xi’s Embrace of China Tech CEOs Spurs Hope of Big Economic Shift(抜粋)

--取材協力:Newley Purnell、Shikhar Balwani、Tian Chen.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.