(ブルームバーグ):昨年非上場化した半導体材料大手のJSRは、中国の人工知能(AI)スタートアップ「DeepSeek(ディープシーク)」の低コストAIモデル登場が与えるJSRへの影響について、「AIの新しい技術が出てくるのはポジティブな方向」だとみる。
江本賢一執行役員は30日のインタビューで、AI開発競争は半導体の需要増につながるとして長期的な影響力に期待を示した。ただ、同社のフォトレジストは極端紫外線(EUV)用の最先端品を含めて生産を拡充しており、「基本はほぼ全ての半導体を作る会社に対して供給」しているため、ディープシークが業界地図を塗り替えても「あまり大きな変化が起きるということではない」という。
JSRは半導体製造工程で使われるフォトレジストで世界シェアトップクラスで、ブルームバーグのデータによると台湾積体電路製造(TSMC)や米インテル、韓国サムスン電子に供給する。
ディープシークは1月、新たなオープンソースのAIモデル「R1」をリリースした。低コストながら米国の技術に匹敵する能力を持つとされ、ハイテク株や米エヌビディアなど半導体関連株に大きな動揺を与えた。
ただ足元では、ディープシークと関連のあるグループが米オープンAIの技術から出力されたデータを不正に入手した可能性について同社と米マイクロソフトが、調査していると報じられた。またディープシークが米エヌビディアの先端半導体を購入したかどうか米当局が調査しているとも報じられた。
ディープシークを巡る動向には、他の半導体関連企業も注視する。アドバンテストのダグラス・ラフィーバ最高経営責任者(CEO)は1月29日の決算説明会で、長期的にはポジティブな影響を与えるとしながら、同社業績への影響については「回答を差し控える」と述べた。
JSRは重複投資が多い材料メーカーの再編の必要性を訴えてきた。現時点で具体化しそうな話はないが、時価総額で数千億円規模の会社がひしめく状況を打破することで「日本の産業競争力を上げるために強い材料メーカーを作っていきたい」と改めて意義を強調。数年かけて実現していきたいとした。
JSRは政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)が提案した株式公開買い付け(TOB)によって、昨年6月に上場廃止になった。
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