(ブルームバーグ):日本銀行の植田和男総裁は31日、金融政策運営に関し、日銀が重視する基調的な物価上昇率は2%に届いていないとの認識を示し、徐々に高まっていくように緩和環境を維持すると語った。衆院予算委員会で答弁した。
総裁は、基調的な物価上昇率について「今のところまだ2%を少し下回っている」とし、現時点では2%に向けて徐々に高まっていくよう、緩和的な金融緩和を維持して経済活動をサポートすることが必要だと語った。日銀が目指しているのは、しっかりした賃金の上昇を伴いながら物価が緩やかに上昇する姿だとも指摘した。

日銀は24日の金融政策決定会合で昨年7月以来の利上げを決め、政策金利を17年ぶりの0.5%程度に引き上げた。利上げ後も、日銀の経済・物価見通しが実現していけば緩和度合いを調整する姿勢は変わっておらず、植田総裁は、こうした考えはマーケットにもしっかり伝わっていると語った。次の利上げのタイミングに市場の関心が集まる中、緩和環境を維持しつつ利上げを継続していく考えを改めて示した。
足元で上振れ気味の消費者物価の上昇率については、食料やエネルギー価格の上昇といったコストプッシュ要因による面が大きいと指摘。その上で、「もちろん、これが国民に多大な負担をおかけしているということは認識している」とし、コストプッシュのインフレ部分は年央・年末にかけて低下していくと見方を示した。
日銀は先週の会合後に公表した新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)見通しについて2025年度を中心に上方修正し、24年度と25年度は上振れリスクの方が大きいとした。総務省が31日に公表した1月の東京都区部の消費者物価指数で、コアCPIは前年比2.5%上昇と昨年2月以来の高水準となった。
円安が物価上昇の要因ではないかとの問いには、日銀として為替レートを特定の水準に誘導するような政策はしていないと説明。為替相場はインフレ率にさまざまな影響を与えるとの認識も踏まえた上で、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現のために適切に政策を運営していくと繰り返した。日銀が保有する上場投資信託(ETF)の処分に関しては、「時間をかけて方法を決めたい」と語った。

(発言の詳細を入れて更新しました)
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