中国DeepSeek(ディープシーク)の人工知能(AI)モデルが米欧企業の優位性を崩すとの懸念が広がっている。27日のニューヨーク市場ではハイテク株が大幅安となり、AI銘柄代表格のエヌビディアは一時13%安となった。時価総額は4650億ドル(約71兆7000億円)の減少に相当し、このまま引ければ個別企業として史上最大の減少となる。

AIブームの追い風で米株は過去2年間、記録的な上昇を見せてきた。しかし、AI分野における米国の優位性を巡る懸念以外にも、金利動向やトランプ政権の政策を巡る不透明感で米株の見通しは曇っている。

DeepSeekショックを巡る市場関係者の見方は以下の通り。

◎プルリミ・ウェルスのパトリック・アームストロング最高投資責任者(CIO):

ディープシークがさらけ出したのは裸の王様だ。途方もない規模のAI予算が優れた結果を保証しない可能性をあらわにした。

ディープシークは投資家マインドに残り続けるだろう。決算シーズンでは予想を上回っても株価は上昇せず、予想を下回れば手痛く売られることになるかもしれない。

◎MFSインベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ロブ・アルメイダ:

ディープシークは巨額資金がある産業に注入されることによって供給が生み出されている現象だと考えている。投資という観点で最終的に重要なのは、その投資利益率(ROI)だ。現時点でのROIは非常に低い。

AIのスケーリングが原因なのか、あるいはベンチャーキャピタルからアプリケーションプロバイダーへの資金投入がリターン不足を理由に後退するからなのか。いずれにしてもエヌビディア半導体の需要はいつか減少するだろう。

◎ロンバー・オディエ・インベストメント・マネジャーズのフロリアン・イエルポ氏:

AIは米国以外でも見つけることが可能である一方、ナスダックの一部企業はバリュエーションがかなり高くなっているため、予見が非常に難しい状況に対しては非常にぜい弱になっている。中国にはナスダック上場企業に相当する企業がいくつかあるが、マルチプルは40倍ではなく10倍程度だ。バリュエーションの大きな差を認識する必要がある。

◎オプティジェスチョンのファンドマネジャー、ニコラス・ドモン氏:

市場がこの発表に過剰反応しているのは、現在の高いバリュエーションが主な理由だと、われわれは確信している。調整が長期化した場合には、魅力的な投資開始の機会になるとみている。

この発表はテクノロジーセクターにパニックを引き起こし、米巨大企業によるAIへの巨額投資に疑問を投げ掛けている。しかし、この進歩がAIのバリューチェーンを阻害することはないと、われわれは考えている。

◎テーマティックス・アセット・マネジメントのAI・ロボティクス担当ポートフォリオマネジャー、カレン・カルマンダリアン氏:

ディープシークについて初めて知った多くの人にとっては大きな驚きだ。そのため、とりあえず行動して後で考える方向に傾斜している投資家もいる。われわれは今、割高なバリュエーション、AIインフラ構築に向けた巨額の投資リターンを巡る疑問、ハイテク大手の決算開始といった状況にあり、一部で出ているポジション圧縮の動きは理解できる。

投資先企業の受注動向や成長性に関して十分な見通しを持っていることに加え、モデルのトレーニングコスト低下がコンピューティング需要の低下と同義ではないことを踏まえると、当社が売りに回ることはない。売りが極端な水準に達した場合には、一部のポジションを強化する好機とさえなり得る。

全体として、ディープシークが実際にどれだけの時間や半導体、資金、リソースを必要としたのか、また最終結果を得るために既存の大規模言語モデル(LLM)をどの程度活用したのかについては、まだ多くの疑問が残っている。

◎アバディーンの投資ディレクター、シンヤオ・ヌン氏:

中国がより少ないリソースで結果を出すことを強いられ、引き続き最善の近道を模索する中、米国は現状に満足してはならないと認識する必要がある。

ディープシークから何らかの教訓を得るとすれば、AI投資を巡る大きな期待が実際にはわれわれが考えるよりもはるかに効率的になるかもしれないということだ。もしそうであれば、AI技術のサプライチェーン全体が前提条件を見直す必要がある。

◎ソシエテ・ジェネラルの米株式戦略責任者マニッシュ・カブラ氏:

テクノロジー大手の影響を薄めるため、S&P500指数連動型ファンドの買いを推奨する。ハイパースケーラーには、設備投資予測を正当化する責任があるだろう。ただ、より多くの企業がAIの生産的な利用方法を編み出せば、ハイパースケーラーもその恩恵を受けるはずだ。

◎シティグループのアティフ・マリク氏:

最先端のAIモデルで米国企業が優位を占める状況は、今後変わるかもしれない。ただ、より制限の多い環境では、米国企業がより高度な半導体にアクセスできることは有利になるとみている。したがって、AI業界をリードする企業が、対処理性能でより魅力的なコストパフォーマンスを実現する、高度な画像処理半導体(GPU)から撤退することにはならないだろう。

原題:Traders Say DeepSeek Is a Real Threat to Pricey US Tech Stocks(抜粋)

(市場関係者のコメントをさらに追加して更新します)

--取材協力:Henry Ren、Sujata Rao、Jan-Patrick Barnert、Allegra Catelli、Abhishek Vishnoi、Winnie Hsu、Sagarika Jaisinghani、Michael Msika.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.