(ブルームバーグ):27日の日本市場で株式は日経平均株価が続落。中国製人工知能(AI)の高度化に対する警戒から値がさのAI・半導体関連株が売られた。半面、日本銀行の追加利上げを受けた銀行株のほか、不動産や陸運株など内需セクターは高く、東証株価指数(TOPIX)は反発した。
ユニオンバンケールプリヴェ(UBP)のマネジングディレクター、ベイサーン・リン氏は中国のディープシーク(DeepSeek)がコストを抑えながら強力なAIモデルを開発することは、高額な支出によって推進されているAIサプライチェーン全体の投資案件を覆す可能性を秘めていると懸念を示した。
債券は米国の長期金利が時間外取引で低下したことを受けて買われた。為替は円が上昇した後に戻す展開。トランプ大統領がコロンビアへの関税賦課を表明するなど米国の関税政策による世界経済への悪影響が懸念され、リスク回避の円買いが優勢となったが、その後コロンビアに対する関税保留との報道で対ドルの上昇を解消するなど、米関税政策を巡って上下した。
SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、トランプ氏が今後も関税を交渉手段として使っていくことが分かり、「欧州など他の国にもかけていくのではないかといった不安感がある」と述べた。
株式
東京株式相場は、中国製AIの高度化に対する警戒からソフトバンクグループやアドバンテストなどAI・半導体関連銘柄が下落した半面、銀行株のほか、不動産や陸運、食料品、建設株など内需セクターが上昇した。
住友生命保険の村田正行バランスファンド運用部長は、AI・半導体関連銘柄の下げは中国のスタートアップ企業であるディープシークのAIモデルに対する懸念によるものとの見方を示した。ディープシークは先週、米オープンAIの技術と競合可能とする最新AIモデルを発表。米テクノロジー企業の技術優位性に懸念が広がり、米国株先物はアジア時間27日の取引で下げた。
売買代金上位では東京エレクトロンやTOWA、日立製作所、SCREENホールディングスが安く、フジクラや古河電気工業など電線株も大幅安。三井住友フィナンシャルグループやトヨタ自動車、オリエンタルランド、三井不動産は高い。
しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは、投資家の多くが日銀に対し慎重な姿勢を取っていたものの、24日午後の植田和男総裁の定例会見が警戒されたほどタカ派的ではなかったため、安心感が広がったとの見方を示した。
債券
債券相場は上昇。りそなアセットマネジメントの藤原貴志債券運用部長兼チーフファンドマネジャーは、前週末から続く米長期金利の低下を背景に国内債券相場も買われたと指摘した。
米10年国債利回りは時間外取引で一時4.58%程度と、前週末終値比4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)程度低下。中国ディープシークのAIモデル発表を受け、米テクノロジー企業の優位性に対する疑念からS&P500種株価指数先物が一時1%超下落したことが背景にあった。
一方、日銀は24日の金融政策決定会合で昨年7月以来の追加利上げを決めた。りそなアセットの藤原氏は、日銀は6-9月のどこかで追加利上げに踏み切ると予想。経済、物価が日銀の見通し通りに推移すれば4月30日から5月1日に開く会合もライブになるとみており、債券相場は時間の経過とともに上値が重くなると指摘した。
新発国債利回り(午後3時時点)
為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=156円ちょうど付近で推移。トランプ米大統領がコロンビアに対する関税賦課を表明したことを受けて一時155円台前半まで買われた後、対コロンビア関税保留との報道で上げを解消した。
ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、リスク回避的な円買いが見られると指摘。トランプ政権による関税政策への懸念から、「円はドル以上に買われやすい」と述べた。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:我妻綾、日高正裕、佐野日出之、Catherine Bosley.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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