オープンAIなどが主導する大規模な人工知能(AI)プロジェクトをトランプ米大統領が22日、テクノロジー企業経営者らと共に発表した際、一つの疑問が頭に浮かんだ。それは、マイクソロフトはどこにいるのか?というものだ。

マイクロソフトはオープンAIに140億ドル(約2兆1900億円)近くを投資し、同社のAIモデルを次世代クラウドサービスに活用している。それにもかかわらず、オープンAIとソフトバンクグループ、オラクルが立ち上げた合弁事業「スターゲート」では、マイクロソフトは技術パートナーとしてしか言及されなかった。

その後、同社はブログ投稿で、オープンAIがマイクロソフトの許可の下で競合のクラウドサービスを利用しAIモデルの訓練や稼働ができると説明。独占契約は骨抜きとなった。

相次ぐ発表でマイクロソフトとオープンAIの関係に多少のほころびが生じているとの臆測が再燃したものの、現時点では両社は離れるよりも連携している方が得策だ。ただ、マイクロソフトはAI分野で優位性を保つためオープンAIが必要とするコンピューティングパワーの資金調達で、さらに多く投資することに前向きではなくなりつつある。

事情に詳しい関係者によると、2023年にマイクロソフトはオープンAIに数十億ドルを追加投資する契約の締結寸前までこぎつけていた。当時、オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)はアジアと中東の投資家と共にAIインフラの大幅な拡張を資金面で支援することについてマイクロソフトと話し合っていたという。

その後、アルトマン氏がオープンAIのCEO職を解任され、同社の経営中枢部に不安定要素があることが露呈。アルトマン氏はしばらくしてCEOに復帰したが、この騒動でマイクロソフトは追加出資計画を断念したと、関係者の1人は匿名を条件に明らかにした。アルトマン氏のインフラ計画はその後何度も変更されたが、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは多額の資金提供に熱意を失っていた。

マイクロソフトによるオープンAIへの投資計画についてはニューヨーク・タイムズ紙が先に報じた。

オープンAIの直近の資金調達ラウンド(66億ドル)でマイクロソフトは7億5000万ドルを投資した。しかし、それより大きな投資を拒んだだめ、アルトマン氏は他のパートナーを探し始め、30年までオープンAIがクラウド能力の全てをマイクロソフトから確保することを義務付けた独占条項にいら立ちを募らせた。

ナデラ氏とアルトマン氏は、オープンAIのコンピューティング能力を劇的に拡大する野望について議論を重ねてきた。ある関係者によると、マイクロソフトは将来的に、スターゲート事業を含むオープンAIのインフラプロジェクトに投資する可能性もあるという。

マイクロソフトの考えについて詳しい複数の関係者の話では、同社はオープンAIとの契約改定を有利と受け止めている。マイクロソフトは今後さらに価値が高まる可能性があるオープンAIの最大の投資家であり、同社の収益の一部を確保できる。出資比率はオープンAIが営利企業として再編されていく中で変わる可能性もあるが、ソフトバンクGやオラクルが出資するデータセンターでオープンAIのモデルが訓練されたとしても、マイクロソフトは引き続きそのモデルにアクセスできる。

また、スターゲート事業や、オープンAIとの提携見直しにより、マイクロソフトはAI関連支出をライバル企業に一部転嫁できる。今年度の資本支出に800億ドルを投じることを公約し、収益化がウォール街の期待より緩やかなペースにとどまるマイクロソフトにとっては、これは好ましい展開だ。

スターゲート事業についてCNBCからコメントを求められたナデラ氏は、「私に分かるのは、800億ドルでいいということだけだ」と述べた。

原題:Microsoft Poised to Benefit From Stargate JV With Zero Money(抜粋)

--取材協力:Matt Day、Rachel Metz.

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