(ブルームバーグ):20日に就任したトランプ米大統領は、関税を巡り1日のうちに相反する姿勢を見せたことで、金融市場を振り回した。投資家や企業経営陣にとって先行きが不透明であることを示す兆候だ。
数カ月にわたって中国、メキシコ、カナダからの輸入品に高額の関税を課すという計画を掲げてきたトランプ氏だが、20日の朝には、当面は動かない構えのように見受けられた。
政権が直ちに関税を導入しないという報道を受け、株価指数先物は上昇し、ドルは下落した。選挙の数週間前には「関税」は辞書の中で最も美しい言葉だと発言していたトランプ氏による実力行使に身構えていた投資家は安堵(あんど)した。
しかし、その日のうちにトランプ氏は方針を一部転換し、2月1日からメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を課すことを発表した。このニュースを受け、メキシコ・ペソとカナダ・ドルは一転して下落した。
笑顔のテクノロジー業界の大富豪や最高経営責任者(CEO)たちに囲まれて宣誓を行ったトランプ氏は、自身を最もビジネスに友好的な大統領と位置付けている。同氏の当選後、フロリダ州の私邸「マールアラーゴ」には経営者たちが続々と訪れた。
その祝賀ムードに包まれた日々がトランプ氏と米国のビジネスリーダーたちの蜜月期だとすれば、リーダーたちにとってこれからは正念場だ。
20日に矢継ぎ早に発表された政策は、トランプ氏が企業、企業リーダー、投資家に、自らの優先事項の変化にリアルタイムで対応することを迫るであろうことを予見させるものだった。
新政権の始動は、米国のビジネス界に「トランプ氏の公約を当てにせず、その行動を見守れ」という警告を発した。
米国の主要産業に大きな変化をもたらす可能性のあるその他の政策公約は、即座に実行に移された。トランプ氏は、労働市場に大きな影響を与え得る移民に関する一連の大統領令を迅速に発した。
政権高官は、既に歴史的な高水準にある石油生産量をさらに増やすための措置を概説した。
米企業は新たな政策の影響について沈黙を守っている。経営陣は数週間にわたってトランプ氏に擦り寄ってきたが、20日に公にコメントした企業はほとんどなかった。
この沈黙は長くは続かないだろう。アメリカン航空グループやゼネラル・エレクトリックなどの大企業は今週、決算報告を行う予定であり、今後の方針について明確な説明を求めるアナリストから、政策に関する質問を受ける可能性が高い。
規制や税制に関するトランプ大統領の見解に賛同する者を含め多くの企業リーダーは、政策変更の可能性に備え、対応策を練っている。
20日には関税を巡る方向転換で市場が高下したが、トランプ大統領による保護貿易主義的な貿易措置の潜在的な範囲と、その実施時期は依然として不明だ。
「今年に関しては、政治的な想定を抜きにして、いかなる経済的な想定も行うことはできない」と、オーディン・キャピタル・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ローリー・キャメロン氏は考えている。
原題:Trump’s Tariff Shifts Are Whiplash Warning for Corporate America(抜粋)
--取材協力:Carter Johnson.
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