コロナ禍以降、日本の輸入浸透度(供給全体に占める輸入品の割合)が大きく上昇している。業種別にコロナ禍前と比較すると、総供給が増加した数少ない業種であるIT関連で輸入浸透度も上昇。とりわけ情報通信機械では、スマートフォンやサーバー、パソコンを中心に輸入が増加する一方、国内生産はコロナ禍前から4割ほど減少し、輸入浸透度が著しく高まった。同業種は旺盛な国内需要を賄ううえで輸入に強く依存している。

情報通信機械産業の輸入が増加する一因は、日本の競争力の低さにある。世界全体の情報通信機械の輸出総額に占める日本のシェアは、足元で1%を割っている。安価な人件費や技術力の向上を武器に中国が2010年代にかけ存在感を飛躍的に高めた一方、日本のシェアはこの20年間でほぼ10分の1にまで減ってしまった。近年の日本における情報通信機械輸入の7割弱は中国製品となっている。

経済・社会のデジタル化や人手不足の深刻化などを背景に、先行きも情報通信機械をはじめとするIT関連財に対する需要は堅調に推移する公算が大きい。IT化は日本の生産性を引き上げることで将来的な成長率の押し上げに寄与すると期待される一方、関連財を中国などからの輸入に依存することで国内生産の増加には結びつかず、当面の景気への影響は限定的にとどまるだろう。

(※情報提供、記事執筆:日本総合研究所 調査部 研究員 藤本一輝)