(ブルームバーグ):昨年11月の米大統領選は政治的な不安をあおっただけではなかった。ボラティリティーの高まりと地政学的な混乱が相まって、ウォール街の大手銀行はトレーディング収入が過去最高に迫る結果となったようだ。
JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス・グループ、モルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカ(BofA)、シティグループの5行は、2024年10-12月(第4四半期)のトレーディング収入が合わせて15%増の245億ドル(約3兆8600億円)と、同四半期としては少なくとも5年ぶりの高水準になったもようだ。選挙が株価に与える影響を意識した取引が活発となり、大手行の株式部門は特に好調だったとみられている。
BofAのブライアン・モイニハン最高経営責任者(CEO)は12月、セールス・トレーディング部門が前年同期比で1桁台半ばから後半の伸びを記録し、過去最高の業績を達成する見通しを示していた。シティグループのマーク・メイソン最高財務責任者(CFO)も12月に、マーケット部門の収入が10%台後半の伸びになると予想していた。
そして、この好調なトレーディング収入はまだ終わっていない。
パイパー・サンドラーのアナリスト、スコット・シーファース氏は「今年はマーケット部門にとって好調な年になる」と予想。「ボラティリティーが高くなるとの暗黙の了解があり、それはトレーディングデスクにとっては良いことだ」と述べた。
昨年9月には連邦公開市場委員会(FOMC)が金利を50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げており、利下げの影響を反映した四半期業績を銀行が発表するのは、ほぼ5年ぶりだ。これは、より低金利での融資を望む顧客を抱える債務引き受け部門にとっては朗報だが、融資金利と預金金利の差を広げたい銀行にとっては通常逆風となる。
ブルームバーグがまとめた第4四半期のアナリスト予想によると、主な収益源で純金利収入として知られるその利ざやは、大手4行の平均で622億ドルと、前年同期比3.7%減になったとみられている。
来週発足するトランプ政権は、純金利収入の行方に大きな影響を与えるだろう。金融規制には緩和的な姿勢で臨むかもしれないが、トランプ政権の政策の一部はインフレ高進リスクをはらんでいると、多くのエコノミストが警告している。
金利低下で企業は合併資金をより低金利で調達でき、合併・買収(M&A)は長期的な低迷からの反転の兆しを見せている。低迷していた融資も伸びると見込まれている。
レイモンド・ジェームズ・フィナンシャルのアナリスト、デービッド・フィースター、デービッド・ロング両氏はリポートで「選挙後と直近の利下げ後、全般的に楽観的な見方が広がっている。融資案件はなおしっかりと見られ、銀行は商業用ローンの需要が加速することを期待している」と指摘した。
投資銀行業務の回復により、シティグループの同業務の手数料は前年同期比で25~30%増加したと、メイソンCFOは述べている。JPモルガンは手数料収入の45%増を見込んでいる。ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループはすでに9-11月(第4四半期)決算を発表しており、投資銀行手数料収入は前年同期比73%増加した。
原題:Big Banks Poised for Trading Windfalls From Election Volatility(抜粋)
--取材協力:Keith Gerstein.
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