雪の中で開催された 1 月 6 日の上下両院合同会議において 2024 年の大統領選挙の結果が承認され、トランプ氏が 1 月 20 日に大統領に就任することが正式に決定した。就任まで約 2 週間に迫る下で、就任式までの期間、就任式、就任式後において金融市場は何をウォッチすべきだろうか。

就任直後のメニューの見極め

就任式において、トランプ氏は強い米国の実現を誓い、同時に米国民の団結を訴えると考えられる。就任式は基本的に儀礼的な内容である。ただ、同時に大統領令を用いて政策変更を早期に打ち出し、実際の変化をアピールする可能性がある。特に、エネルギー政策等に関する規制緩和やパリ協定離脱などを含む大統領令などが早期に発動され得る。移民規制に関しても、一定の方針が提示されるかも知れない。就任直後の政策発動に注目すべきことはもちろん、1 月 20 日以前に早期発動されるメニューが報じられる可能性があり、金融市場は警戒が必要だろう。

様々なオプションの検討は当然

関税賦課に関して、ワシントン・ポストがグローバル関税の対象を重要品目に絞る旨の検討を報じ、トランプ氏が SNS において強く否定するという動きが見られた。大統領選挙において掲げた方針を就任前に修正するような報道を、トランプ氏が否定することは当然と思われる(否定しなければ大問題と言える)。ただし、逆に、米国内に多大な影響を及ぼすため、次期トランプ政権内において、グローバル関税における様々なオプションが検討されていることも当たり前と解釈できる。オプション検討がないことこそ不自然だろう。現時点では、真のグローバル関税も、対象限定のオプションも、全てがテーブルの上にあると考えるべきだ。

関税の具体化までには一定の時間

関税賦課に際しては、パブリックコメント募集や各国との交渉などが行われると考えられる。いずれの内容に至るにせよ、具体化までには一定の時間を要すると考えられる。なお、SMBC日興証券の経済分析チームは対中国関税の早期実現を見込む一方、対象を限定しないグローバル関税の可能性は低いと引き続き考えている。

トランプ減税の議論には時間を要する

ジョンソン下院議長はトランプ減税を始めとする重要課題を盛り込んだ法案の 5 月までの成立を掲げたが、議会における薄氷のマージンを踏まえると「意欲」の領域にとどまるだろう。まずは 3 月 14 日につなぎ予算期限が控え、更に債務上限問題に対する緊急措置対応の枯渇が夏から秋にかけて訪れる見込みだ。就任式において、トランプ氏が減税継続や債務上限撤廃を謳う可能性はあるものの、具体的な対応が早期に講じられるとは考え難い。

上院承認人事

1月20日の就任式以降に断続的に金融市場の関心を集めそうなイシューが、閣僚などの上院承認人事である。承認が危ぶまれる人事も存在するため、指名された候補者の発言、関係する上院議員のスタンスのみならず、承認に関する日程までが関心対象になるだろう。なお上院の承認を得ない「休会任命」が最終的に用いられる可能性は否定されないものの、基本的には通常プロセスが用いられる見込みだ。

情報提供、記事執筆:SMBC日興証券 チーフマーケットエコノミスト 丸山義正

2025年1月8日発行レポートより転載