(ブルームバーグ):スイスの銀行クレディ・スイスとナチス時代の口座保有者との関係を巡る調査で、同行が以前の調査で開示を怠っていた新たな証拠が発見された。米上院予算委員会の幹部が4日、明らかにした。
この調査を監督する独立オンブズマンのニール・バロフスキ氏は、クレディ・スイスの内部調査部門の記録に対する初の包括的な調査中に、新たな文書を見つけた。この中には第2次世界大戦中の顧客情報も含まれる。
今回の調査では、ナチスによる「金の隠匿、戦時物資購入のための不正取引の偽装、ユダヤ人事業のアーリア化(非ユダヤ人への売却)を含むユダヤ人資産の略奪、ナチス戦時経済の全般的な支援」をほう助した疑いのある数百の仲介業者が判明したと、バロフスキ氏は昨年12月17日付の同委員会宛ての書簡で説明した。
「Amerikanische Schwarze Liste(米国のブラックリスト)」という印が押された多数の顧客ファイルが発見された。これは第2次大戦中に「枢軸国から直接資金を提供されているか、枢軸国と定期的に取引していることが知られている個人と企業」を示すために連合国が使っていた名称だ。
米財務省の問題資産購入計画(TARP)を管轄する特別監査官を務めた経歴があるバロフスキ氏は、2022年11月にクレディ・スイスによってオンブズマンを解任されていたが、同行がUBSグループに買収された後の23年後半に復帰した。
UBSの広報担当者は4日に電子メールで「同氏の作業を円滑に進めるため、あらゆる必要な支援を提供している」とコメントした。
米上院予算委のホワイトハウス委員長(民主)は、UBSが「全ての関連記録の徹底的な調査を確実に実施する」ための措置を講じたと称賛した。
同委共和党筆頭理事のグラスリー議員は「UBS主導の下でのクレディ・スイスの新たな協力」を歓迎する一方、「クレディ・スイスがナチスとの関係を示す追加の証拠を何年も隠していた」と批判。クレディ・スイスが知っていた情報を過去の調査で必ずしも共有していたわけではないことをバロフスキ氏は発見したと、両議員は指摘した。
また、調査では第2次大戦後にナチスの戦犯や協力者の逃亡をほう助したネットワーク「ラットライン」とクレディ・スイスとの「重大なつながり」を示す証拠も明らかになった。
ラットラインに関係する三十数人の個人のクレディ・スイスの口座が特定されたと、バロフスキ氏は書簡で説明した。
原題:Credit Suisse Links to Nazi-Era Accounts Expand in Investigation(抜粋)
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