欧州連合(EU)の新たなグリーンボンド(環境債)規則が21日、適用開始となった。基準が厳しいだけに、当面は利用する発行体が一部に限られる可能性がある。

新たな規則は、「欧州グリーンボンド基準」(EUGBS)。気候問題に配慮したプロジェクト向けに資金を調達するための債券市場が急拡大する中、環境配慮を装う「グリーンウオッシュ」を一掃することを目的とする。EUによると、今後「欧州グリーンボンド」として債券を発行する場合、同基準への準拠が求められるとしている。

EUは、国際資本市場協会(ICMA)の「グリーンボンド原則」(GBP)をはじめ、業界のガイドラインや用語が乱立する市場でスタンダードをつくる構えだ。

ただEUGBSに拘束力はない。銀行関係者によると、来年は同基準の一段と厳しい条件を回避する発行体は多いと見られる。

INGグループのサステナビリティー市場部門の責任者、ハンス・ビマンス氏は、「市場の大半は、ICMAのグリーンボンド基準を使い続けるだろう」と指摘。採用する可能性が最も高いのは、再生可能エネルギー関連など「比較的シンプルなグリーン資産」を多く保有する発行体との見方を示している。

米国で広がるESG(環境・社会・企業統治)投資への反発にも関わらず、グリーンボンド市場は世界的に拡大し続けており、今年だけで約5600億ドル(約88兆円)が発行されている。

EUGBSの主要な基準の一つとして、資金使途の少なくとも85%は、サステナビリティー関連規則であるEUグリーンタクソノミーとの整合性が求められる。全てのプロジェクトは、「重大な悪影響を与えない」といった条件を順守し、欧州証券市場監督機構(ESMA)が認定したEUグリーンボンドの評価者による認証を受けなければならない。

追加の負担が求められ尻込みする向きは多くなる一方、適格なプロジェクトを十分抱える発行体に関しては、借り入れコストを低減し得ると納得する可能性もある。資産運用会社がタクソノミーとの整合性から新基準に準拠した債券を選好し、サステナビリティーを重視する投資資金流入が促される可能性もある。

法律事務所A&Oシャーマンのチームは、新基準について「EU加盟国や国際機関、政府機関、グリーン事業特化の企業が最初に利用する可能性がある」と指摘。その後、「サステナビリティー報告の環境に慣れる発行体が増えるのに伴い、普及が広がる可能性がある」と話した。

原題:EU’s Gold Standard for Green Bonds to Create New Market Segment(抜粋)

--取材協力:Kamil Kowalcze、Marton Eder.

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