(ブルームバーグ):子どもを乗せた母親の自転車や歩行者で混雑する渋谷のジグザク通りを車で走ったことがあれば、米アルファベットの自動運転サービス部門ウェイモが、初の海外進出先になぜ東京を選んだか気になるだろう。
東京にある私の家の近所には、2車線だが実質的に1車線の狭い道路があり、人間が運転するタクシー同士が日常的にぎりぎりですれ違う。
東京で自動運転車事業が直面しそうな技術的な難題に加え、私には偏見もある。東京の魅力は歩行者に優しい街並み、徒歩や自転車、公共交通機関で移動が非常に便利な点だ。
自動運転かどうかにかかわらず、道路に車が増えれば、東京ならではの魅力が脅かされる。既存の公共交通インフラ拡大への投資の方が、より良い解決策になるだろう。
それでも自動運転車は日本で一定の役割を果たすことができそうだ。高齢化が進み、労働力不足への対応を優先課題とする日本では、自動運転技術が変化をもたらす大きなチャンスがある。
地方コミュニティーへのサービス提供から着手できるのではないか。人口密度が低く、歩行者がはるかに少ないこれらの地域は、運転もずっと簡単だ。公共交通機関が大幅に縮小される状況で、ウェイモの自動運転車は残された大きな穴を埋めることが可能だろう。
ウェイモは賢明にも東京でゆっくり事業を進める方針だ。すぐに顧客にサービス提供する予定はなく、日本交通や配車アプリのGOと提携し、自動運転技術の実証実験を開始する。
ウェイモの狙いは、東京での運行についてより深く学び、初の左側走行の違いを把握することだ。港区や新宿区、渋谷区などのエリアで、マッピングのため、タクシー運転手がまずマニュアルで車両を運転する。
ウェイモは、米フェニックスとサンフランシスコ、ロサンゼルス市内の一部で現在サービスを展開している。これらの都市の人口は最も多いロサンゼルスでさえ400万人未満と、東京の1400万人を大幅に下回る。日本の中小都市なら、海外での初の実証実験の場として、より比較可能なデータが得られるだろう。
自動運転業界は米国内外で相次ぐ障害に直面し、ウェイモの日本進出にミスが許される余地はほとんどない。
米ゼネラル・モーターズ(GM)は今月に入り、開発費高騰などを理由にロボタクシー事業のクルーズから撤退すると発表。ホンダは11日、GMと予定していた日本での自動運転タクシーサービスについて、中止を含め判断していく予定だと説明した。
ロボタクシーの技術開発は既に極めて難しく、多額のコストもかかり、注目度の高い事故が1件でも起きれば、企業的野心と評判に壊滅的な打撃を与えかねない。
福井県では昨年、自動運転車両が駐輪中の自転車のペダルに接触する事故を起こし、運行が数カ月中止された。
タクシー運転手不足にもかかわらず、ウーバー・テクノロジーズのような自動運転でない配車サービス会社にも、日本では規制環境面の課題がある。だがフードデリバリー部門のウーバーイーツは、地元企業や利害関係者と密接に連携しつつ日本市場に参入し、消費者のニーズに応えることに成功した。
ウェイモも地域住民のニーズに応え、政策担当者と緊密に協力すれば、同じことができる。先細りする公共交通サービスの代替手段が必要な地方や郊外から始めてもよい。同社が目指す大都市での大々的展開にならないとしても、予想外の成功が起こり得るだろう。
(キャサリン・トーベック氏はアジアのテクノロジー分野をカバーするブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。CNNとABCニュースの記者としてもテクノロジー担当しました。このコラムの内容は、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:Waymo’s Japan Trip Should Go Beyond Tokyo: Catherine Thorbecke(抜粋)
翻訳に関する翻訳者への問い合わせ先:東京 亀山律子 rkameyama@bloomberg.net翻訳に関するエディターへの問い合わせ先内田良治 ruchida2@bloomberg.netコラムニストへの問い合わせ先:Tokyo Catherine Thorbecke cthorbecke1@bloomberg.netエディターへの問い合わせ先:Ruth Pollard rpollard2@bloomberg.netもっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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