加藤勝信財務相は24日の閣議後会見で、ドル・円相場が5カ月ぶりの円安水準で推移していることに関して警戒感を示した上で、過度の変動に対しては適切に対応すると改めて市場をけん制した。

加藤財務相は、「足元では一方的、また急激な動きが見られる」とし、投機筋の動きを含めて「為替市場の動向を憂慮しており、行き過ぎた動きには適切に対応を取りたい」と語った。為替に対する政府のスタンスは従来から変わっていないと述べた。

外国為替市場では、先週から再び円売り圧力が強まっている。その背景には、日米金利差の縮小により長い時間がかかるとの見方が広がっていることがある。加藤財務相の発言は政府として為替市場の動向を注視する姿勢を強調したものだ。発言後、円は対ドルで強含み、一時1ドル=156円92銭まで上昇した。発言前は157円39銭まで上昇していた。

関西みらい銀行の石田武ストラテジストは、クリスマス休暇前の実需主導の動きの中で財務相のけん制発言に円買いで反応したと説明。「そこまで実弾介入が差し迫っている感じではない」ものの、年末年始まで流動性が低下するため、介入が行われると値動きが大きくなる可能性があり、新たな円売りを仕掛けづらく手控え感が強まりそうだと語った。

米連邦準備制度理事会(FRB)は先週、市場予想通り政策金利を引き下げた一方で、2025年までの追加利下げ予想回数を引き下げた。一方で日本銀行は19日の金融政策決定会合で現状維持を決定した。植田和男総裁は会見で、追加利上げの決定には今後の賃金動向やトランプ次期米政権の経済政策の影響を見極める必要があると発言。市場で早期利上げ観測が後退し、円は一段と下げ幅を広げた。

円安進行のリスク

市場参加者の中には、今後数日間で円安が進むとみる向きもある。バークレイズのアジア外国為替オプション責任者、ムクンド・ダガ氏(シンガポール在勤)によれば、一部のヘッジファンドは160-165円のレンジへの円安を想定しているという。

日銀の植田総裁は25日の経団連審議員会で講演を予定しており、発言のトーンに調整の兆しが見られるかどうかを市場は注視することになる。また、27日には先週の決定会合における「主な意見」 が公表される。利上げに慎重な内容が示されれば、さらに円安になる余地が依然としてあり、通貨当局にとってはリスクとなる。

日本の通貨当局による介入額は今年に入って15兆円超に達しているが、7月に161円台後半を付けて以来、市場介入を行っていない。

ふくおかフィナンシャルグループの佐々木融チーフ・ストラテジストは、ドル高と米金利高の要素も強いことから今介入しても「効かない」と言う。その上で、前回介入が行われた161円台になるまでは介入を見合わせる可能性が高いとの見方を示した。

通常、介入を実施する前に各国は海外当局と協議することが求められる。加藤財務相は、来年1月の米新政権の始動を念頭に海外当局との為替介入を含むコミュニケーション方針について問われ、一般論と前置きした上で、「金融当局間の連携は引き続きしっかりと取っていきたい」と述べた。

(市場関係者のコメントなどを追加して更新しました)

--取材協力:酒井大輔、グラス美亜.

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