自民、公明両党は2025年度与党税制改正大綱案で、所得税が生じる「年収103万円の壁」について25年から123万円に引き上げる方針を示した。党内手続きを経て20日に正式決定する。さらなる拡大を求める国民民主党との合意が得られないままの見切り発車となる。

与党の税制調査会総会で資料配布された大綱案では、「103 万円の壁」について国民の主張する178 万円を目指して来年から引き上げ、「ガソリンの暫定税率」を廃止するとした11日の3党幹事長合意を紹介。今後の対応について「引き続き、真摯(しんし)に協議を行っていく」とした。このほか、防衛増税は、所得税での措置を先送りし、法人税とたばこ税のみ26年度から実施するとした。

税制改正大綱が決定すれば、政府は来年度予算案編成の詰めの作業に入る。年収の壁を123万円とする案には、さらなる引き上げを求める国民が反発。少数与党で臨む通常国会での協力を取り付けられるかどうかは見通せず、予算案や税制改正法案の成立に不安を残す形となった。今後の調整で修正を迫られる可能性もある。

自民、公明、国民の3党は20日昼、国会内で幹事長会談を開き、年収の壁引き上げなど11日の合意内容の実現に向け、「引き続き関係者間で誠実に協議を進める」とした確認書に新たに署名した。国民の榛葉賀津也幹事長によると、24日に3党の政調会長、税調会長らによる協議を行うという。

大綱案では123万円への引き上げは、「デフレからの脱却局面」で「物価調整を行うものである」ことを踏まえて、「特段の財源確保措置を要しない」と位置付けた。仮に今後、さらなる引き上げを行う場合は「歳入・歳出両面の取り組みにより、必要な安定財源を追加的に確保するための措置を講ずる」必要性を指摘している。

財務省は、国民が主張する178万円に引き上げた場合は国と地方を合わせて7-8兆円程度の減収となる試算を示していた。

防衛増税

防衛力強化の財源確保に向けた増税については、法人税とたばこ税で26年4月から実施する。法人税は、法人税額に対する税率4%の新たな付加税として「防衛特別法人税」を導入。課税標準となる法人税額からは500万円を控除する。

たばこ税では、加熱式たばこの税率を引き上げて紙巻きたばことの税負担差を解消し、その後3年間にわたってたばこ全体の税率を1本当たり0.5円ずつ上げる。

当初の政府・与党案では、所得税額に対する税率1%の付加税を導入する予定だったが、103万円の壁の引き上げの状況を勘案しつつ「引き続き検討する」として先送りした。

その他

  • iDeCo(個人型確定拠出年金)などの拠出限度額引き上げ
  • NISA(少額投資非課税制度)の利便性向上、金融機関変更時の即日買い付けを可能に
  • 自動車関係諸税は中長期的な視点から、車体課税・燃料課税を含め総合的に検討し、見直しを行う

--取材協力:広川高史.

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