(ブルームバーグ):フランスの高級品ブランドグループ、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは、カンヌの歴史的なビラ(別荘)を約5000万ユーロ(約82億円)で購入した。この観光地で開かれるスターが集うフェスティバルで自社ブランドをアピールするために活用すると、事情に詳しい関係者が明らかにした。
関係者の1人によると、LVMHは12のベッドルームがある「ビラ・バガテル」で、ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオール、モエ・エ・シャンドンなど傘下ブランドによる参加者限定ショーやイベントを開催する予定だという。
ブルームバーグが入手した未公開の書類によれば、家具や手数料を除き4650万ユーロで4月に取引が完了している。カンヌでは過去最大級の不動産取引だ。不動産仲介のマグレイ・アンド・サンズがこの物件を扱った。LVMHの広報担当者はコメントを控えた。
高級品ブランドやファッション企業は、最上級の顧客をもてなしたり、事業拡大や「インスタ映え」する体験型マーケティングの機会を創出するため、ホテルやブランドを冠した住宅への投資を拡大させている。
LVMHは2023年に小売業を中心に過去最高の24億5000万ユーロ相当の不動産を世界中で買い入れた。最近ではフランスの高級ホテルグループの株式を取得した。
関係者によると、LVMHは、観光客がフレンチリビエラに押し寄せる夏の間、このビラを貸し出す予定。
ビラ・バガテルは丘の上に位置し、街と地中海を一望できる。アールデコ様式の建物に、屋外プールが2つ、屋内プールが1つ、テラスガーデンがあり、14人のスタッフが寝泊まりできる。
1928年に建てられたこのビラは、ロシア系アルメニア人の億万長者であるサルキソフ兄弟や銀行家のアナトリー・モティレフ氏、アルジェリア人実業家のラフィク・ハリファ氏ら著名なオーナーが次々と所有してきたと仏紙ルモンドは伝えている。
カンヌは毎年5月に有名なカンヌ映画祭、6月には広告業界の一大イベントであるカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルが開催されることで知られており、いずれも豪華なビラやヨットでのパーティーに一流のセレブが集まる。
傘下ブランドがスターに衣装を提供したり、レセプションを主催したりしているLVMHは、すでにこれらのイベントの中心的存在となっている。2月には自社ブランドの魅力を高めることを目的としたエンターテインメント部門の立ち上げを発表した。
原題:LVMH Bought a €50 Million Villa in Cannes for Brand Events(抜粋)
--取材協力:Simon Lee、Angelina Rascouet.
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