(ブルームバーグ):日本銀行が19日の金融政策決定会合で追加利上げを見送ったことで、ストラテジストの間では相対的に金利が低い円を売って高金利通貨を買うキャリートレードが復活し、為替市場では一段と円安が進む可能性が指摘されている。日銀の声明もハト派的との受け止めが多い。
シンガポールのサクソ・マーケッツは、18日の連邦公開市場委員会(FOMC)でタカ派的な姿勢を見せた米連邦準備制度理事会(FRB)と日銀の違いに言及し、キャリートレーダーが将来の円安に賭ける動きを強め、さらなる円安進行に拍車をかける可能性があると予測。野村証券は、植田和男総裁が会見でタカ派的な姿勢を示すにも限界があるとみている。
【ストラテジストらの見解】
ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)のアジアFX戦略責任者、アルビン・タン氏
- きょうの日銀の利上げをあまり期待していなかったが、声明が据え置かれたことはややハト派的で、利上げに反対票が投じられたことと相殺される部分もある
- 植田総裁会見では1月の利上げを示唆するヒントが示されるとの期待があるが、もしも明言を避けるならドル・円の上昇余地はさらに広がるだろう
オーストラリア・コモンウェルス銀行の為替ストラテジスト、キャロル・コング氏
- ドル・円の上昇は、今回の日銀会合に向け25ベーシスポイントの利上げを織り込む動きが弱まったことを反映しているに過ぎない
- 植田総裁は2025年初頭の利上げを示唆する可能性があり、そうなればドル・円は下落する。そうでなければ、ドルは11月15日の高156円75銭まで上昇する可能性もある
サクソ・マーケッツのチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏
- FRBのタカ派傾斜と日銀のちゅうちょは、円キャリー取引を継続する投資家に新たな理由をもたらす可能性がある
- キャリー取引の唯一の障害はボラティリティーの高まりで、ドル・円が160円で強い抵抗に直面する可能性があることを意味する
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジスト
- 声明文も驚きの内容などはなく、植田総裁の会見待ち。据え置きなのでタカ派的な発言にも限界がある
- 不透明要因として認識しているトランプ次期米大統領の政策と米景気、賃金交渉が利上げ見送りの理由なら、来年1月の利上げも難しいことはあり得る
- 国内の経済・物価動向のオントラックを強調して1月期待をつなぎとめるだろうが、円が買われるような発言は期待しづらく、あくまで155円程度で安定させられるかどうか
スカンジナビスカ・エンスキルダ・バンケンのアジア戦略責任者、ユージニア・ビクトリノ氏
- 25年にかけてFRBがタカ派的な姿勢を強める中、日銀は来年も金融引き締めを継続する余地があり、早ければ1月にも追加利上げを実施する可能性がある
- しかし、ドル・円は依然としてFRBの見通しに左右され、18日のFOMCに対する過剰な反応から市場が落ち着くまでは154円50銭を下回る可能性は低い
クレディ・アグリコルCIBのシニア・ストラテジスト、デビッド・フォレスター氏
- 日銀は金融市場や為替相場の変動が経済に与える影響を引き続き注視する必要があると述べているが、円安がインフレ上昇リスクにつながるという指摘はない
- 重要なのは、ドル・円が155円を超えており、日銀が安心できる水準であると考えられることだ
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員
- 日銀が利上げを見送ったことで、日本株市場に安心感が広がっている。この決定は、午後の取引でも株価を下支えするだろう
--取材協力:Marcus Wong、船曳三郎、横山桃花、Michael G Wilson.
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