第二次トランプ米政権下では、中国からインドへの生産移転が本格化する見通しだ。第一次トランプ政権下で4段階にわたる対中制裁関税の引き上げが実施された際には、ベトナムや台湾に比べてインドへの生産移転は限定的であった。

しかし今後は、以下の分野でインドが有力な拠点候補となるであろう。
まず、携帯電話と医薬品の分野で、インドの生産能力が一段と増強される可能性がある。対中関税の導入前後における米国の輸入シェアの変化を見ると、インドは携帯電話と医薬品でシェアを拡大している。

これら2品目はポストコロナ以降の経済安全保障の高まりを背景に、世界的なサプライチェーンの再編が進んだ品目で、そのなかでも生産能力を増強した国がインドであった。これらは制裁関税の対象とならなかったために中国もシェアを伸長した。もっとも、今後、米国政府が中国からの輸入品に一律60%への関税引き上げを実施する場合、中国からインドへの大規模な生産移転が生じる見通しである。
さらに、蓄電池も有力なインドへの生産移転候補だ。米国政府は9月に蓄電池分野の対中関税引き上げ(7.5%→25%)を実施した。今後、米国が一段の関税引き上げを実施する場合、生産移転が本格化する見通しである。インド政府は、製造業の国際競争力の強化に向けて蓄電池産業の育成を企図しており、生産額の増加に応じた補助金や生産に必要な重要鉱物に対する輸入関税免除を実施。こうした取り組みが奏功して、蓄電池の対米輸出は大きく増加している。内外の多くの企業が蓄電池分野への投資計画を発表しており、中国からの生産移転の流れが加速すると予想される。


(※情報提供、記事執筆:日本総合研究所 調査部 副主任研究員 細井友洋)