米アマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾス氏は今週、トランプ次期米大統領と会談する予定だ。ベゾス氏は宇宙開発事業を巡る実業家イーロン・マスク氏との競争で次期政権からの支援を必要としている。

全てが計画通りに進んでいれば、マスク氏が手掛ける衛星通信サービス「スターリンク」に対抗するアマゾンの低軌道衛星ブロードバンドネットワーク「プロジェクト・カイパー」は今頃、一部のユーザーにベータテスト版サービスを提供していたはずだ。

だが、カイパーは2024年に衛星打ち上げを2度にわたり延期するなど計画に遅れが生じている上、アマゾンはマスク氏が率いる米宇宙開発企業スペースXと協調する人物がひしめく次期政権の誕生という見通しに直面している。

また、宇宙産業情報を手掛けるクイルティ・スペースのリポートによると、カイパーのコストは200億ドル(約3兆800億円)と、アマゾンが当初想定していた最低額の100億ドルを大きく上回る水準に跳ね上がっている。

同リポートでは、26年半ばまでに1600基余りの衛星を稼働させるという政府の期限を満たすには、アマゾンに「奇跡」が必要だとの見方を示している。

そのため、アマゾンは米連邦通信委員会(FCC)からの免除を模索しなければならない可能性が高い。

ベゾス氏はトランプ氏の政権1期目で攻撃の対象となった。ベゾス氏が所有するワシントン・ポスト紙が政権に批判的な報道を展開したためだが、同氏は最近、融和的なアプローチを取っている。

トランプ氏の勝利を受け、ベゾス氏は珍しくX(旧ツイッター)に投稿し、トランプ氏に祝辞を贈った。また、ベゾス氏がトランプ氏の敗北を予想していたとのマスク氏の主張を即座に否定した。

さらに、アマゾンがトランプ氏の就任基金に100万ドルを寄付すると、アマゾンの広報担当者が述べた。米メタ・プラットフォームズによる寄付に続くもので、テクノロジー大手は次期政権と良好な関係を築こうとしている。

ベゾス氏はまた、12月4日の米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)主催のディールブック・サミットで、トランプ氏の政権復帰について「非常に楽観的だ」とし、「これまでのところ、トランプ氏は1期目の時よりも落ち着いており、自信があるようだ」と述べた。

イーロン・マスク氏とトランプ次期米大統領

スペースXとは異なり、アマゾンは衛星を打ち上げるための独自のロケットを保有していない。アマゾンは22年にボーイングとロッキード・マーチンの合弁会社ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)、欧州のアリアンスペース、ベゾス氏が出資する宇宙観光・探査企業ブルー・オリジンのロケットを使用して最大83回にわたり衛星を打ち上げると発表している。

クイルティ・スペースのリサーチ部門ディレクター、ケイレブ・ヘンリー氏は「カイパーは3機の新型打ち上げロケットに過度に依存している」と指摘。「アマゾンが可能な限り早期にサービスを開始するには、ロケットを提供する全ての企業が定期的な打ち上げペースを業界の前例よりも速い水準に加速させる必要がある」と述べた。

アマゾンの広報担当者によると、同社は新年早々にも衛星を打ち上げ、25年末までのサービス開始を目指すという。

S&Pグローバル・レーティングのアナリスト、クリス・ムーニー氏は、アマゾンがサービスを開始すればカイパーは競争力を持つ可能性があると指摘。「資金力のあるオーナーがおり、顧客に直接アプローチする文化がある。スターリンクだけでは市場全体に対応できず、アマゾンおよびカイパーが参入する余地はある」と述べた。

原題:Bezos Feuded With Trump, But Now Needs Help in Musk Space Race(抜粋)

--取材協力:Matt Day、Kelcee Griffis、Loren Grush.

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