ドナルド・トランプ氏のホワイトハウス返り咲きを踏まえ、中国は自国経済への悪影響を打ち消すため、より積極的な景気刺激策を導入するとともに、製造業を強化し、人民元の下落を容認し得ると市場関係者はみている。

ブルームバーグ・ニュースが先週の米大統領選後に調査した19人のエコノミストのうち15人は、こうした措置により第2次トランプ政権の4年間、トランプ氏が打ち出すであろう政策の中国経済成長率への影響を毎年平均1ポイント未満に抑えられる可能性があると答えた。

3人は国内総生産(GDP)成長率が1-2ポイント下押しされると予測したが、1人は大きな影響はないと回答した。

スコープ・レーティングスの中国担当プライマリーエコノミスト、デニス・シェン氏は「次のトランプ政権により、中国は成長が鈍化するだろうが、そうした落ち込み分は予算・金融面での刺激策により部分的に打ち消される」と予想した。

トランプ氏は中国製品に60%の関税を課すと示唆しており、そうなれば米中貿易は壊滅的な打撃を受け、中国にとって今年数少ない明るい材料だった輸出への影響も必至だ。

数年にわたる不動産市場の低迷と根強いデフレ圧力に見舞われている経済を安定化させようとする中国政府の取り組みは、一段と難しくなりそうだ。

財政出動

一方、貿易戦争拡大の可能性が高まるにつれ、輸出の落ち込みを補うため、中国当局が内需を刺激するより積極的な景気浮揚策を講じるとの期待も高まっている。

8日に発表された財政政策パッケージは、消費を刺激するもっと直接的な措置を望む投資家を失望させたが、藍仏安財政相はより大胆な措置を来年採用する可能性を示唆した。

圧倒的多数のエコノミストが、トランプ氏の政権復帰を受け、中国が財政赤字の大幅拡大を容認すると答えた。これは、調査で提示された政策オプションの中で最も多い回答だった。

次いで多かったのは、金融緩和と住宅支援策強化、先端製造業への投資拡大だ。直接的な現金給付との答えはほとんどなかった。

通貨切り下げ

回答者の半数以上は、中国が元安誘導に踏み切る可能性があり、そうなれば中国輸出品の競争力が高まり、潜在的な関税の一部を打ち消すのに役立つだろうと説明。

しかし、そうした通貨切り下げの程度については意見が大きく分かれ、2025年の元相場見通しは1ドル=7.3-8元と開きが生じた。

ANZ銀行の楊宇霆氏ら一部のエコノミストは、中国は通貨の切り下げ競争よりも安定を望んでいると分析。中国は少なくとも1990年以降、外国からの直接投資が増加しているが、今年は純流出に転じる可能性がある。元安は資本流出を促す。

報復

中国が関税措置の報復として米国側に打撃を与える可能性があるかどうかについては、回答者の意見はそれほど明確ではなかった。

回答者の大多数は、報復関税の対象となる可能性が最も高い品目として農産物を挙げた。

中でも最も標的になりそうなのは大豆で、牛肉、トウモロコシ、そして自動車がそれに続く。レアアース(希土類)や電気自動車(EV)用バッテリーの輸出を制限する可能性もあるとみている回答者もいた。

一部のエコノミストは、中国の製造業は米国の関税を回避するため、国外の生産拠点への投資を増やす公算が大きいと想定している。

ただ、中国の輸出企業が米市場での損失を補うために米国以外への出荷を増やそうとすれば、それらの国々からも反発を招く恐れがあると警告する関係者もいる。そうなれば、中国は多方面にわたり貿易戦争激化の種をまくことになりかねない。

「これは貿易相手国の反発を引き起こし、中国からの輸入増加に対し国内産業を守ろうとする動きが出てくるだろう」とキャピタル・エコノミクスの中国経済責任者ジュリアン・エバンスプリチャード氏は述べた。

原題:China Seen Countering Trump Tariffs With Stimulus, Weaker Yuan(抜粋)

--取材協力:Wenjin Lv.

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