トランプ次期米大統領は今週中に財務長官候補者リストを絞り込む方針で、経済や税制、銀行政策に大きな影響力を持つ同ポストに、ウォール街の経歴を持つ人物を起用する方向にある。トランプ氏の計画に詳しい複数の関係者が明らかにした。

財務長官候補として名前が挙がっているのは、米投資銀行キャンターフィッツジェラルドのハワード・ルトニック最高経営責任者(CEO)、ヘッジファンドの大富豪ジョン・ポールソン氏、著名投資家ジョージ・ソロス氏のマネーマネジャーを務めたスコット・ベッセント氏、カーライル・グループ元幹部で現バージニア州知事のグレン・ヤンキン氏らだ。

トランプ次期大統領(中央)

ベッセント氏は8日、フロリダ州パームビーチにあるトランプ氏の邸宅「マールアラーゴ」で同氏と会ったが、この会合は財務長官ポストの面接ではなかったと、プロセスに詳しい複数の関係者は語った。

5日投開票の大統領選で民主党候補のハリス副大統領に圧勝したことで、トランプ氏は2期目に向けて直ちに政策や人選に軸足を移すことができ、政権移行計画は急ピッチでスタートしている。

プロセスに詳しい複数の関係者の話では、トランプ氏のウォール街の盟友たちは、財務長官に金融業界に深い知見を持つ人物を起用するよう促しており、次期大統領のチームはこのアドバイスに従う意向を示している。来年は幅広い減税措置が期限切れとなるため、トランプ氏は2017年の減税の場合と同様、財政政策を幅広く策定する機会を得ることになる。

財務長官や国務長官は通常、次期大統領が最初に人選を行う注目度の高い重要ポストだ。しかし、トランプ氏は1期目にジェフ・セッションズ氏を司法長官、ジム・マティス氏を国防長官に選んだことについて後悔の念などを表明しており、今回は真剣に人選を進めると、同氏の盟友は予想している。

ハガティ上院議員も財務長官と国務長官の候補に挙がっているが、トランプ氏のチームは一時的にでも共和党の議席を減らしたくないため、上院議員をトップポストに起用することには消極的だ。

大半の場合、空席となった上院議員の補欠候補を州知事が指名するが、この手続きによって共和党は数週間から数カ月にわたり何人かの議員を欠く可能性があり、政権初期における同党の法案通過やトランプ次期大統領の政治任命者を承認する能力に支障をきたす恐れがある。

人選プロセス

面接はマールアラーゴで行われる。このプロセスに詳しい複数の関係者によれば、トランプ氏は各閣僚ポストの候補者として5-8人のリストを受け取り、それぞれの人物についてパワーポイントを使ったプレゼンテーションが行われる予定という。

各候補の横には、誰が推薦したかが記されており、トランプ氏は候補者が自分の最側近らにとってどれほど重要な人物かを考慮することができる。トランプ氏の家族、献金者、元ホワイトハウス補佐官らが候補者名を提出している。

トランプ氏の広報担当カロリン・リービット氏は「次期大統領は間もなく第2次政権を担う人々の選考を開始する。これらの人選は決定次第発表される」と声明で説明した。

トランプ氏は既に、大統領選で陣営の選対本部長を務めたスージー・ワイルズ氏を女性初の大統領首席補佐官に起用した。ワイルズ氏は政権移行を監督し、連邦政府の約4000の政治任用職を埋めるため政権移行共同委員長のルトニック氏がまとめた数千人のリストから人選を進める見通し。

ルトニック氏は数カ月かけて議員、献金者、企業経営者、保守派指導者、元トランプ政権当局者らと面会し、トランプ氏に忠実な人物を素早く指名して政権の主要ポストに充てるためのデータベースを作成した。

ポスト争いは既に公のリークやカウンターリークの形で顕在化している。

トランプ政権1期目で米通商代表部(USTR)代表を務めたロバート・ライトハイザー氏も財務長官候補の1人だ。だが、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が最近報じたところでは、ライトハイザー氏は以前と同じ仕事をオファーされたとされる。

このプロセスに関与している一部の人々はこれについて、ライトハイザー氏を財務長官ポストから遠ざけようとする動きとみている。一方で複数の関係者によれば、トランプ氏はライトハイザー氏にUSTR代表のポストはオファーしなかったという。

ロバート・ライトハイザー氏

ライトハイザー氏は既に中国と欧州連合(EU)に絡んだ関税計画を策定し始めており、ホワイトハウスで政権全体の通商政策を監督する幅広いポートフォリオを持つ可能性があると、プロセスに詳しい関係者は語った。

トランプ氏が金融業界のベテランを財務長官に起用し、ライトハイザー氏に通商問題の権限を与えた場合、政権1期目と同じような形で政策論争が展開される可能性が高い。

当時は意思決定プロセスの一部として議論を好むトランプ氏の面前で、大統領執務室のほか、時には報道陣や外国代表団が同席する場で、激しい意見の衝突が繰り広げられた。

米プロレス団体ワールド・レスリング・エンターテインメント(WWE)のリンダ・マクマホン共同創業者はルトニック氏と共に政権移行共同委員長を務めており、関係者によると、トランプ氏が政権初期に打ち出す可能性のある移民、貿易、エネルギー、その他の分野に関する一連の大統領令の草案をスタッフと作成している。

このグループは、来年の包括的な税制法案の議会通過に向けて戦略を練っているという。トランプ政権1期目で中小企業庁(SBA)長官を務めたマクマホン氏は、商務長官候補にも挙がっている。

なおトランプ氏は13日、ホワイトハウスでバイデン大統領と会談する予定だ。

トランプ氏の政権移行担当者は、26年に政権メンバーが大幅に入れ替わる可能性に備えていることを示唆している。同年に行われる中間選挙で共和党が議席を減らし、法案通過が難しくなるかもしれない時期と重なる可能性がある。事情に詳しい関係者によれば、中間選挙前にトランプ氏の政策課題の大半を完了させることが目標だという。

トランプ次期大統領の任期後半に共和党が上院で議席を減らすか、民主党が上院多数派に転じれば、新たな政治任命者を承認することも難しくなる可能性がある。同氏のチームは、最初の任命では承認が難しい候補者を優先し、将来的な任命では一部の民主党議員に受け入れられやすい人物を検討するよう提案している。

原題:Trump Expected to Narrow Treasury Chief Options by Week’s End(抜粋)

(政権移行チームの狙いを最後の2段落に追加して更新します)

--取材協力:Amanda L Gordon.

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