一方、駆け込みの動きが顕在化している分野も引き続き存在しており、鉄鋼製品の輸出額(前年比+11.3%)やアルミ製品の輸出額(同+20.1%)など、中国製品に対する警戒感が強まる分野で高い伸びが確認されるなど、新興国などで中国製品に対する警戒感が強まるなかでそうした影響を掻い潜ろうとする動きもみられる。
一方の輸入額は前年同月比+0.3%と前月(同+0.5%)から一段と伸びが鈍化しており、当研究所が試算した季節調整値に基づく前月比は2ヶ月ぶりにわずかながら拡大に転じる動きをみせているものの、中期的な基調は減少傾向で推移しており、内需の弱さが輸入の足かせになっている様子がうかがえる。
ただし、上述のように欧米などが中国に対する圧力を強める動きをみせるなか、そうした影響を掻い潜るべく駆け込みの動きが活発化しているほか、商品市況が調整の動きを強めていることが需要を押し上げる動きもみられる。半導体の輸入量(前年同月比+16.9%)や半導体部品の輸入量(同+9.9%)はともに堅調な動きをみせており、欧米などが規制強化に乗り出す動きをみせるなかでそうした影響を掻い潜ろうとしている様子がうかがえる。
さらに、冬場のエネルギー需要に対応すべく石炭の輸入量(前年比+12.9%)の伸びが加速しているほか、銅鉱石の輸入量(同+8.7%)、鉄鉱石の輸入量(同+2.9%)の伸びも軒並み加速しており、中国国内における生産活動を下支えする流れも見込まれる。その意味においては、当面の輸出入については引き続き欧米などをはじめとする対中包囲網の動きと、それを掻い潜ろうとする中国の動きの影響を受ける展開が続くと予想される。


昨年の中国経済を巡っては、内需は力強さを欠く一方、欧米などによる対中包囲網の動きにも拘らず、金融市場における人民元安の進展を受けた価格競争力の向上が妙味となる形で外需は堅調な動きをみせるとともに、景気を下支えする展開が続いてきた。しかし、米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げ実施を受けた米ドル安の動きを反映して人民元相場を巡る動きは一変しており、人民元安による価格競争力の向上に期待することは難しくなっている。そうした状況に加え、欧米などのみならず、新興国の間にも中国製品に対する警戒感が強まっているほか、世界経済を取り巻く環境も厳しさを増していることを勘案すれば、先行きの中国景気にとって外需が下支え役となる余地は小さくなっていると捉えられる。他方、当局は先月末以降に五月雨式に内需喚起に向けた取り組みを公表しているものの、いずれについても中国経済が直面する構造問題に着手するものとはなっていない。よって、当局による経済成長率目標の実現に向けた動きが短期的に景気を下支えする可能性はあるものの、大きく経済状況を好転させることも期待しにくい内容に留まることが予想される。

※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵徹)