日本経済への影響

トリプルレッドによる減税を背景とした米国経済の加速は、輸出拡大を通じて日本経済にもプラスの波及効果をもたらすと期待される。一方、トランプ氏が保護貿易政策を先鋭化させる場合、自動車産業を中心とした日本の輸出産業はネガティブな影響を受ける。最終的な日本経済への影響はこうしたプラスとマイナスの綱引きで決まるものの、現時点においては流動的な要素が強く、トランプ氏が勝利する場合には見通しの不確実性が非常に高いといえる。

一方、ハリス氏の場合にはねじれ議会となる可能性が高く、バイデン現政権から経済政策は大きく変わらない(変えられない)可能性が高い。よくも悪くも現状維持と考えられ、日米の経済動向はファンダメンタルズに大きく依存する。2025年の米国経済が利下げ効果に支えられながら緩やかに拡大を続ける場合、日本経済は底堅い外需、及び実質賃金の回復を通じた内需の持ち直しを背景に緩やかな成長を続けることが見込まれる。

【注釈】
具体的な算出方法は以下の通り。①1992~2020年の8回の大統領選における全米の投票傾向(50州における民主党候補と共和党候補の得票率差の中央値)と、同時に実施された州別・選挙別の得票率の相関係数を算出、②正規分布(平均0、標準偏差0.03[世論調査の一般的な誤差である±3%])を仮定し、全米の投票傾向(民主党か共和党のどちらに風が吹くか)に関する乱数を生成、③全米の投票傾向と①の相関係数を基に、州別・選挙別の投票傾向に関する乱数を生成、④大統領選の勝敗を巡って、RealClearPoliticsによる接戦州のハリス・トランプ両氏の支持率の差を用いて、「実際の得票率=事前の世論調査+③の乱数による変動」と仮定し、各州における勝敗を決定、⑤上下院選は270toWinによる情勢分析を基に、Leanの選挙区は優勢の候補が約65%の確率で勝利、Likelyは約85%の確率で勝利とそれぞれ仮定し、①の相関性も考慮したうえで各選挙区の勝敗を決定、⑥これらの結果を集計し、大統領選の勝利候補と議会における支配政党を決定、⑦上記シミュレーションを1万回繰り返したうえで、大統領選と議会選の組み合せシナリオのそれぞれの確率を算出。過去の選挙結果はMIT Election Labによるデータを使用。

(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 前田 和馬)