(ブルームバーグ):米サウスカロライナ州の高校に暴力が加えられるとの予告があり、学校はパニックに陥った。結局、単なる脅しで、被害はなかった。だが、ランカスター郡学区は安全に関する現実的な課題に向き合うことになった。
学区内にある26の建物で武器をスキャンする人工知能(AI)搭載システムに少なくとも200万ドル(約3億円)を割り当てる計画が立てられ、来週の住民投票にかけられる債券5億8800万ドル発行案の一部となっている。
学区の安全担当責任者は警備の強化を検討していたが、最近起きたこの出来事で不安に拍車がかかり、安全に投資する必要性が高まった。
こうした動きは全国的なトレンドだ。銃の暴力に対する警戒感から全米各地の学区は、AI検知システムや防弾ドアなどさまざまな安全強化策に多額の投資を行っている。
世論の圧力に加え、債券発行や連邦支援による新たな財源を背景に、学校のセキュリティーに関係する米業界は新型コロナウイルス禍以後、急成長を遂げてきた。IHSマークイットの推計によると、その規模は30億ドルに上る。
ランカスター郡が購入を検討している機器を開発したエボルブ・テクノロジーズ・ホールディングスでは、教育セクターからの需要が急増。同社のシステムは1時間に生徒2000人を検査でき、ニューヨークのメトロポリタン美術館など利用者の多い場所で既に使用されている。
同郡の安全対策責任者ロニー・プライラー氏は「学校に何も持ち込ませないようにすることが最大の狙いだ」と述べた。

ただ、テクノロジーの導入強化が学校の安全性を高めるとの見方に誰もが納得しているわけではない。
米司法省の助成を受けて整備されたテクノロジーの影響を研究しているサマンサ・ビアノ米ジョージ・メイソン大学准教授によれば、AIシステムは安心感をもたらすかもしれないが、暴力を防ぐ効果はまだほとんど立証されていない。
「セキュリティー装置に多額の資金が投入されているが、実際の効果を証明する研究結果はあまりない」とビアノ氏は指摘している。
原題:AI-Powered Gun Scanners Draw Investors Who Fear School Violence(抜粋)
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