11月5日の米大統領選を前に不安と期待が高まる中、政治に関する賭けをする人は、個人的な感情を脇に置き、世論調査と予測市場の乖離(かいり)から利益を得ようとしている。

従来型の世論調査では接戦が予想されている一方で、予測市場ではここ数日はトランプ氏優勢に大きく傾いており、同氏勝利の確率は60%超となっている。

米フロリダ州マイアミ在住の47歳の弁護士、カブス・ラルチャンダニ氏は「世論調査では接戦が示されているが、ハリス氏は(予測市場で)40%未満のオッズで買うことができる」と指摘。

同氏はハリス氏の勝利に1000ドル(約15万円)余り賭けているが、引き続きオッズでトランプ氏勝利が予想されるなら、賭け金を10倍に増やす方針を示した。

大統領選が近づくに伴い、予測市場の注目度も高まっている。特にある人物が賭けサイト、ポリマーケットでトランプ氏の大統領当選に4500万ドル賭けたと伝わってからは、その傾向が顕著だ。ニューヨーク時間28日午後時点で、同サイトはトランプ氏の当選確率を66%としている。

ポリマーケットの広告(ニューヨーク・ブルックリン)

予測市場について、多くの人が従来の世論調査よりも信頼性が高いと考えるようになった。その主張によれば、これらのサイトでは、参加者に金銭的利害があるため、政治的な結果を予測するのに効果的だという。また、2016年のトランプ氏の勝利が政界に衝撃を与えたように、予測市場は一部の注目度の高い世論調査の誤りからも恩恵を受けている。

多くの場合、政治に関する賭けを行う人は利益追求のために、個人の政治的傾向を二の次にしている。自身を「ロムニー上院議員派の共和党支持者」と称する米ボストン在住のプロのポーカープレーヤー、バート・ハンソン氏は、今回の選挙ではリバタリアン党に投票するつもりだ。しかし、同氏はカルシという予測市場では、ハリス氏がネバダ州で勝利に賭ける一方で、ベットオンラインというサイトでは、トランプ氏勝利に賭けている。

「アービトラージを見つけることが可能だ」と、今回の選挙で約10万ドルを賭ける計画のハンソン氏は話す。「どちらに転んでも1万1000ドル獲得できるが、実際に投じた資金は1万500ドルだけだ」と述べた。

デンマーク・コペンハーゲン在住の39歳の暗号資産トレーダー、ヤコブ・スカーニング氏は、ハリス氏が勝つとは思っていないものの、ヘッジとして同氏に賭けている。トランプ氏が勝利すれば、共和党が暗号資産を受け入れていることから、同氏のビットコインのポジションは上昇することが見込まれる。ハリス氏が勝利すれば、その逆が起こり得るため、同氏が勝利した場合の利益で、暗号資産の損失を穴埋めできる可能性があると考えている。

「オッズが非常に良かった」と同氏は話し、「自分の応援するチームの敗北に賭けることもできる。全ては打算で、そこに個人的な感情はない」と述べた。

原題:‘All Brain and No Heart’: Traders Make Big Election Markets Bets(抜粋)

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