最近2回の破壊的なハリケーンに見舞われた米南東部の復興作業は、重要な労働力である移民の不足で長引く恐れがある。

建設業者が気をもんでいるのは、トランプ前大統領が大統領選で勝利した場合、業界にとって重要な労働力供給源である移民をさらに取り締まる考えを表明していることだ。同業界はグレートリセッション(大不況)に端を発した構造的な住宅不足への対応だけでなく、最近ではハリケーン「ヘリーン」と「ミルトン」の襲来で大きな被害が発生した地域社会の再建のためにも、より多くの労働力を必要としている。

ノースカロライナ州アッシュビル近郊の建設会社ブランチで働くジョン・アングリン氏は「住宅の再建と修復に必要な仕事はどこから手をつけていいのかさえ分からない。再建に必要な労働力は以前からすでにひっ迫していた」と語った。

米労働省の統計によると、全米の建設労働者の4人に1人は米国外生まれ。主要な住宅市場の一部ではその割合はさらに高く、ニューヨーク市では建設労働者の53%が外国生まれで、テキサス州では建設労働者の約半数が不法滞在者であると推定されている。

ピュー・リサーチ・センターによる2022年の推計によれば、建設業界で働く約1200万人のうち、150万人(13%相当)が不法移民。

トランプ氏とハリス副大統領は、規模は大きく異なるものの、不法移民の取り締まり強化をいずれも提案している。トランプ氏は全ての不法移民の国外追放を誓っており、ハリス氏は国境越えのさらなる制限を打ち出している。

エコノミストらは、大幅な移民削減は経済全体にとって良いことではなく、特に建設業や農業などの分野に悪影響を及ぼす可能性があると指摘する。労働力がひっ迫すれば、住宅供給不足やコスト上昇につながりかねず、自然災害で住居を失った米国民が自宅に戻ることができるまでもっと長期間待たざるを得なくなる可能性がある。

トランプ氏は反移民のレトリックを駆使し支持基盤の拡大を図ってきた。同氏は「米国史上最大の強制送還プログラム」を実施すると公約しており、その中には不法移民の国外追放も含まれる。 経済政策研究センター(CEPR)のシニアエコノミスト、ディーン・ベーカー氏は、公約が実施されれば「建設業界にすぐに非常に大きな打撃が及ぶ」と予想した。

原題:Trump’s Deportation Talk Worries Builders in Hurricane-Hit Areas(抜粋)

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