(ブルームバーグ):半導体受託生産大手の台湾積体電路製造(TSMC)にとって、17日の7-9月(第3四半期)決算発表は大きな正念場となりそうだ。オランダの半導体製造装置メーカー、ASMLホールディングが予想外に弱い見通しを示したことで、同社決算に対してはいつも以上に注目が集まっている。
エヌビディアの次世代人工知能(AI)チップへの懸念後退やアップルの新型iPhoneに対する楽観論を追い風に、TSMCの米国預託証券(ADR)は8月の安値から30%値上がりし、14日には過去最高値を更新した。
暫定ベースの7-9月売上高は市場予想を上回っており、堅調な見通しが示されればTSMC株はさらに上値を伸ばす可能性があるとみられている。とりわけASMLショックで世界の半導体株が総崩れとなったことで、需要に関するTSMCのコメントは細部まで分析されそうだ。
フィナンシエール・ド・レシキエのアジア株式責任者、ケビン・ネット氏は「2025年の需要に関する力強いガイダンスやコメントがあれば、おそらく株価を押し上げるだろう」と指摘。TSMCの設備投資額は「ガイダンスのレンジ上限である320億ドル(約4兆7800億円)前後となる可能性が高い」とし、そうなれば強気の見通しを示唆するとの見方を示した。

数カ月前には、高い収益期待に応えられないとの懸念からAI銘柄から投資家が離れる動きが出ていた。それだけに、今回の決算の重要性は高まっている。TSMCの1株利益予想は今年に入って37%切り上がり、過去最高に達した。
もっともTSMCの7-9月決算は、収益性の改善を示す見通しで、粗利益率はここ6四半期で最も高い54.8%と見込まれている。
決算では通期の業績見通しが焦点となりそうだ。TSMCは7月に増収率見通しを引き上げている。オールスプリング・グローバル・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、ゲイリー・タン氏によると、エヌビディアの次世代AIチップ「ブラックウェル」の生産拡大とTSMCの先端パッケージング能力増強に関する進展も注目すべきポイントだ。
ASMLの弱気な見通しで半導体業界全体に対する懸念が再燃しているものの、TSMCの収益基盤はより強固だとみられている。TSMCの長期見通しは、AIモデルの訓練やホスティングに使用される先端チップの需要動向が鍵を握っており、損なわれることはないとアナリストは指摘する。
アーロン・ジェン氏らノムラのアナリストは先週のリポートで「AIは引き続きTSMCのファンダメンタルズとバリュエーションの原動力だ」と指摘。「すでに慎重なサプライチェーンの構築が行われている」ためAI以外の事業によるマイナス影響は限定的だとし、「2025年にかけて著しい循環的な持ち直しが想定される」と述べた。
ファンダメンタルズ要因以外では、米選挙を控えて地政学的な懸念を指摘する声もある。TSMCは中台間の緊張を回避する目的もあり、巨額を投じて米国、日本、ドイツに新たな生産拠点を設けている。
前出のネット氏は、トランプ前大統領が返り咲きを果たした場合、「台湾の地政学的リスクプレミアムは上昇する可能性がある」と指摘。「一方で、TSMCはリショアリングの面で多くの取り組みを行っており、今回おそらく一段の情報を提供するだろう」と話す。
目標株価のコンセンサスは、米市場上場のTSMC株価が今後1年で16%値上がりすると見込んだ水準だ。予想株価収益率(PER)は23倍。2021年につけたピークの34倍と比較すると、バリュエーションはそこまで割高ではないとみられている。
原題:TSMC Bulls Expect Strong Results to Support Record-High Shares(抜粋)
--取材協力:Cindy Wang、Jane Lanhee Lee、Edwin Chan.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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