(ブルームバーグ):米電気自動車メーカー、テスラが先週、ロボタクシー(無人タクシー)「サイバーキャブ」の試作品を発表した際、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はロボタクシーの大量生産を確約した。
しかし、大きな問題がある。米国の規則では認められないのだ。
自動車メーカーは、米国の自動車安全規則で義務付けられているハンドルなどの運転制御装置を備えていない自動運転車を公道で走らせる前に、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)の許可を得る必要がある。仮にテスラがこのハードルを乗り越えたとしても(決して保証されている訳ではない)、公道を走らせることができるロボタクシーは1年間でそう多くない。つまり、同社の洗練されたロボタクシーは実質的にはニッチな製品にとどまるということになる。
サウスカロライナ大学の法学教授で自動運転車問題の専門家、ブライアント・ウォーカー・スミス氏は「幾つかの法案が失敗に終わるだろうが、議会がこの上限を引き上げない限り、安全基準の適用除外は大量生産を行うメーカーにとって実行可能な手段ではない」と述べた。
マスク氏がロボタクシー発表時に言及を避けた問題の一つが規制上のハードルだった。
NHTSAは長年、メーカーに対し、適用除外の下で年間2500台を走行させることを認めてきた。ただ、前四半期の納車台数が約50万台に達しているテスラにとってこの台数は極めて少ない。マスク氏が先週投資家に対して述べた、テスラは「この車両を非常に大量に生産する」との発言とも相反する。
適用除外への道のりも不確実だ。米ゼネラル・モーターズ(GM)は2022年、NHTSAに対し自動運転車の走行を巡る適用除外を申請したが、当局が2年以上にわたり申請に応じず、GMは最終的に今年7月に断念した。
NHTSAは15日午後、テスラはサイバーキャブの適用除外を申請していないと明らかにした。NHTSAは20年、スタートアップ企業のニューロが低速自動運転宅配車を走行させることを認めたが、これが現在までに認められた唯一の適用除外となっている。
テスラは規制当局の許可を求める計画に関するコメント要請に応じなかった。
公道での車両の走行に関する権限を持っている各州も独自のハードルを示すかもしれない。例えばテスラはカリフォルニア州で必要な自動運転車の試験や公道走行に関する許可を申請していない。同州はかつてのテスラ本社所在地で、アルファベット傘下のウェイモやGM傘下のクルーズなど自動運転のスタートアップ企業がロボタクシーを展開している。
ジョージメイソン大学の教授でNHTSAの元アドバイザー、メアリー・「ミッシー」・カミングス氏は「より大きな問題は州の許可だ」と指摘。テスラがカリフォルニア州に試験データを提供し「必要な許可を得るためにはまだ何年もかかる」と述べた。同氏はテスラの運転支援機能「オートパイロット」について否定的な見解を示している。
原題:Musk’s Vow to Make Lots of Robotaxis Conflicts With US Rules (1)(抜粋)
--取材協力:Dana Hull.
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