(ブルームバーグ):韓国銀行(中央銀行)は今週、待望の政策シフトに踏み切る見通しだ。住宅市場が鈍化の兆しを見せ、インフレ率が目標を下回る水準に落ち着く中、緩和サイクルを開始した世界の中銀に追随する。
ブルームバーグが調査したエコノミスト22人のうち20人は、韓国中銀が11日の会合で政策金利を0.25ポイント引き下げ3.25%に設定すると予測。実現すれば同中銀にとって、2021年8月に政策金利を過去最低の0.5%から引き上げ、新型コロナウイルス禍の景気刺激策からの脱却を図って以来の政策転換となる。

その後、韓国経済はおおむね拡大を続けており、今年は半導体を中心とする輸出の好調を背景に、2.4%前後の成長率を達成する軌道にある。しかし、これらの数字は見かけ倒しかもしれない。
経済の中身に目を向けると、家計支出はここ数年間にわたってほぼ停滞。韓国では通常、国内消費よりも輸出の方が成長への寄与度が高いが、ここ数年は以前と比べ輸出への依存がはるかに増している。
いったん外需が冷え込み始めると、けん引役を内需に依存しようとするため、成長の勢いが失われる恐れがある。家計支出は4-6月(第2四半期)に前期比0.3%減少した。
さらに、信用リスクが依然として経済見通しに影を落としており、韓国中銀に政策緩和の圧力がかかっている。先月の米金融当局による0.5ポイントの利下げで両国の金利差は縮小し、韓国中銀には自国通貨に過度の下落圧力をもたらすことなく、0.25ポイントの利下げを行う余地が生じた。
スタンダードチャータード銀行の韓国部門エコノミスト、パク・チョンフン氏は「利下げは経済が必要とする追い風となるだろう。米中両国における断固とした金融政策転換に、対ドルでのウォン上昇が重なり、韓国中銀に利下げのインセンティブを提供している」と指摘した。

早期の利下げは家計債務の増加につながり、金融安定を脅かしかねないとの懸念から、韓国中銀はこれまで政策緩和を先送りしてきた。ソウルの住宅市場過熱の兆候を受けてそうした懸念が強まり、下降軌道にあった消費者物価が先月はついに中銀目標の2%を大きく下回ったものの、当局が金利据え置きを続ける動機となった。
政府当局は数カ月前に住宅価格抑制策として、住宅供給拡大と融資規制強化を打ち出した。9月にはソウルの集合住宅の売買件数が2カ月連続で減少し、価格も下落。そうした措置が市場の沈静化に寄与した可能性が示された。
モルガン・スタンレー・アジアのエコノミスト、キャサリン・オー氏は「国内住宅市場に対する警戒感がなお強いことを考えれば、今回はタカ派的な利下げが予想される。ガイダンスは分かれる可能性があり、トーンは慎重なものになるかもしれないが、待望の利下げが実現する公算が大きい」との見方を示した。

原題:BOK Eyes Long-Awaited Policy Pivot on Signs of Cooling Property(抜粋)
--取材協力:Tomoko Sato.
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