(ブルームバーグ):11月の選挙で勝利しホワイトハウス復帰を狙うトランプ前大統領は、負けたらユダヤ系有権者のせいになる可能性を示唆した。反ユダヤ主義と闘う趣旨の会合で登壇したトランプ氏は、自分はイスラエルを支持しているのに「正当な扱いを受けていない」と不満をぶつけた。
「負ければそれは大いにユダヤ系の人々のせいだ、というのが私の意見だ」とトランプ氏は共和党に献金するミリアム・エーデルソン氏が主催したイベントで発言。「それはひとえに民主党があなたたちを押さえ込み、あるいは呪いをかけているからだ」と続けた。
同氏は自分がイスラエルを支持していることを根拠に、ユダヤ系米国人からもっと政治的な支援を受けても良いはずだと繰り返し示唆。ユダヤ系米国人とイスラエルという国家を混同する発言もあった。
「地球上のどの民族よりも、イスラエルは彼女を打ち負かさなくてはならない」と、トランプ氏は民主党の大統領候補であるハリス副大統領に言及。「私の得票率が40%ということはあり得ない。私こそが、あなたたちを守っているのに」と訴えた。
ユダヤ系有権者の支持を取り付けたいトランプ氏は19日、イスラエル系米国人の団体が主催したフォーラムとイベントの両方で演説。イスラエルの存続は大統領選挙の結果次第だとし、「私が勝たなければ、イスラエルは消滅するだろう」と述べた。
こうした発言はユダヤ系米国人にイスラエル国家への忠誠心を強要しており、再び論争を引き起こすリスクがある。

ハリス氏の夫、ダグ・エムホフ氏は20日、「ドナルド・トランプはまたしてもユダヤ人に罪をなすりつけ、スケープゴートにする言葉遣いで、反ユダヤの炎をあおった。しかもこうした暴言は反ユダヤ主義と闘うイベントで行われた」とソーシャルメディアの「X(旧ツイッター)」に投稿。「私たちは脅しに屈することなく、ユダヤ人として堂々と胸を張って、恐れずに生きていく」と述べた。
ユダヤ公共問題評議会(JCPA)のエイミー・スピタルニック最高経営責任者(CEO)は、トランプ氏のスピーチについて「トランプ氏は以前から、自分を支持しないユダヤ人に裏切り者でクレージーとのレッテルを貼ってきた。トランプ氏とイスラエル国家両方への忠誠を求め、選挙に負ける可能性をユダヤ人のせいにするのは危険なやり口だ」とスピタルニック氏。トランプ氏のやり方は「反ユダヤ主義の過激思想」を正当化していると非難した。
トランプ氏はその後に開かれたイベントでも、自分はユダヤ系有権者から正当な扱いを受けていないと主張。勝利するにはユダヤ票が「必要になるだろう」と続けた。

ピュー・リサーチ・センターが8月26日から9月2日にかけて実施した世論調査では、ユダヤ系登録有権者の65%がハリス氏を支持もしくは支持に傾いていると回答。トランプ氏の34%を大きく引き離している。
原題:Trump Says Jewish Voters Would Have ‘Lot to Do With a Loss’ (1)(抜粋)
--取材協力:Jordan Fabian、Bill Allison、Stephanie Lai.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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