【被告人質問】
被告が何も語らないまま迎えた12日目の公判。
被告はこの日も、弁護士の問いかけにうつむいた状態で黙秘を続けていた。

しかし…

弁護士:
「どうして何も話さないのですか」
被告:
「社会に戻るつもりがないからです」

これまでの公判で何か、心境の変化があったのか。被告が裁判を通じ初めて発した言葉だった。

また検察側の質問には…。

検察官:
「長女や次女、事件の裁判にかかわった人に二度とかかわらないと約束できますか」
被告:
「かかわることはありません」

だが、これ以外は「何も答えたくありません」などと述べ、事件の詳細は語らず、被害者に謝罪の言葉もなかった。

ところが、19回目の公判で被告は一転して、質問に答え始めた。
それは事件の動機だった。

【被告人質問】
弁護士:
「今回の事件どうして起こしたんですか」
被告:
「色々なことに疲れたことに合わさって交際を断られたラインがきて、逃げたくて決心がついて事件を起こしましたね」

弁護士:
「何から逃げたかったんですか」
被告:
(涙ながらに…)「母から身体的な暴言を吐かれて嫌でした。将来のこと自動車整備士のことも…」

被告は時折、言葉をつまらせながら自らの言葉で説明した。

一方、検察側は・・・
検察官:
「今も夫婦の長女は苦しみ続けていますが、反省の気持ちはありますか」
被告:
「正直よくわからないです」


検察官:
「法廷で謝罪しないのはどうしてですか?」
被告:
「そちらの方が自分にとっていいと思ったからです」

この日、被告は検察側、弁護側、それに裁判官や裁判員からの合計220を超える質問、すべてに自らの言葉で説明した。
しかし、被害者や遺族に対する謝罪の言葉は、今回も聞かれなかった。