山口県美祢市在住のパラアスリート、大谷春樹さん(19)。去年11月、知的障害者の自転車競技で国際大会に初出場し、金メダルを手にしました。今年、父親との二人三脚でさらなる飛躍を目指す姿を追いました。
大谷春樹さん
「自転車が好きです。練習はきついけど楽しいです」
秋吉台・カルストロードを駆ける

1月3日。年明け間もない、秋吉台のカルストロードを駆け抜ける2人は、自転車競技のパラアスリートの大谷春樹さんと、父親の正樹さんです。
正樹さん「ギア2枚上げて!」
春樹さん「はい」
父親とともに練習に励みます。週に4日から5日はみずからを追い込みます。
国際大会初出場で初優勝、父が「司令塔」
春樹さんは去年11月、オーストラリアで開かれた知的障害者の自転車競技の国際大会で初出場、初優勝を果たしました。出場した3つの部門すべてでメダルを手にしました。
春樹さん「とてもうれしかったです」
ひたすらペダルを回し、誰よりも早くゴールへ。シンプルなルールは春樹さんには合ったといいます。しかしレースになると、ペース配分やほかの選手との駆け引きも重要な要素です。その司令塔の役割を果たすのが父親の正樹さん(42)です。優勝した国際大会でも残り7キロからのアタック(ペースアップ)を指示し、これが、金メダルにつながりました。正樹さん「ゴールした瞬間、本当にみんなに感謝して伝えたいなぁという思いでいっぱいでした」
春樹さんは坂道を得意としています。軽いギアで、回転を上げて高低差のあるカルストロードを駆け上がります。
正樹さん「去年に比べ、かなり強くなってるなぁという印象は受けます。ここはプロのレースも行われる場所で、ここを何往復もして実力を付けてきましたので、非常にいい練習場所だと思っています」
父と二人三脚で世界に挑む
ベンチに座り、話し込む正樹さんと春樹さん。走り終わったあとも熱心な指導は続きます。
正樹さん「コーナーに入ったら、相手がペダルを回したらどうするの?」
春樹さん「ペダルを回す」
正樹さん「そう、付いていく。ここで離れたらコーナー立ち上がりで置いていかれるから」帰宅してからは、自宅の裏庭に設けたトレーニングルームでさらに追い込みます。
正樹さん「5、4、3、2、1…まだまだ」
春樹さん「お父さん、疲れたけど」
正樹さん「もう1回行くよ、せ~の」
トレーニング用のバイクのモニターには、負荷が数字で示されています。正樹さんの手には、こぐ時間と負荷を細かく示したメモが。
正樹さん「このように、やるメニューとやる時間を決めて、練習内容を決めてやってますね」
春樹さんの手首には、疲労の度合いを見るための心拍数を測る装置が付いています。体調に合わせて無理のない練習メニューを作るのも、父親の重要な役割の1つです。

自宅のリビングには、これまでに獲得したメダルや賞状が飾られています。春樹さんの描いた絵も一緒に並んでいます。絵を描くことも得意で全国で表彰されたこともあります。
きっかけは小学校のマラソン大会

そんな春樹さんが自転車を始めるきっかけは、小学校のマラソン大会でした。
正樹さん「春樹の場合は、毎年最下位でゴールしてましたので、賞状がもらえないといつも泣いてました。大会に出て完走証をもらおうという目的で始めたのが、自転車に乗り始めたきっかけです」
4年生で始めましたが、当初は右と左を教えるのにも苦労したといいます。それが10年足らずで世界のトップレベルにまで成長しました。