2022年、山口県阿武町が誤って1人の住民に4630万円を振り込んだ事件で、金をネットカジノに使ったとして電子計算機使用詐欺の罪に問われている山口市の会社員・田口翔(26)の控訴審初公判が8日午前11時から広島高裁で始まります。田口被告は午前10時25分ごろ、弁護人らと広島高裁へ入りました。
この事件は2022年4月、山口県阿武町が新型コロナの給付金4630万円を誤って町内に住んでいた田口被告の口座に振り込みました。起訴状によると、田口被告は誤った振り込みと知りながら、金をネットカジノの決済代行業者の口座に振り替え、不法に利益を得たとして、電子計算機使用詐欺の罪に問われています。
争点は被告の行為が「電子計算機使用詐欺」の罪に当たるか
裁判の争点は、田口被告の行為が「電子計算機使用詐欺」の罪に当たるかどうかです。罪が成立するには(1)コンピューターに「虚偽の情報」などを与え、(2)財産上不法の利益を得たという2つの要件を満たす必要があります。
これまでの裁判で検察側は、田口被告には誤った振り込みであるということを銀行に伝える「信義則上の告知義務」があったのに、伝えなかった違反があった。金を振り込む正当な権限がない田口被告が、正当な権限があるよう装って送金したことは、コンピューターにうその情報を与えることになるとして「電子計算機使用詐欺の罪にあたる」と主張。
一方弁護側は、男がネットバンキングに入力した口座情報やパスワードなどはすべて正しいもので、うその情報は入れていない。ネット上で誤振り込みだと銀行に伝えることはできず、この時点で銀行は誤振り込みがあったことを知っていたため、告知義務があったとは言えないとして、無罪を主張しています。
1審・山口地裁は弁護側の主張を退け、有罪判決
2023年2月、1審の山口地裁(小松本卓裁判官)は、田口被告は誤振り込みを銀行に告知する義務を果たしておらず、正当な権利行使でないのに、正当な権利行使であるという情報をコンピューターに与えたことは「虚偽の情報」にあたるなどと判断。懲役3年・執行猶予5年(求刑 懲役4年6か月)の有罪判決を言い渡しました。これに対し弁護側は、判決を不服として即日控訴していました。
午前11時から控訴審初公判
控訴審の初公判は、午前11時から広島高裁で開かれます。田口被告側は改めて無罪を主張するとみられます。