続いては、わたしたちのSDGs。
目標の12番、「つくる責任、つかう責任」につながる取り組みです。
注目したのは、見た目やサイズが良くないというだけで捨てられる農作物。
この作物を資源として生かそうと活動する若手農家を取材しました。


農園貞太郎 遠藤久道さん
「つや姫のくず米になります、除菌ウェットティッシュの原料として
使ってもらうように取り組みをしています。私自身ワクワクしています」

酒田市で農業を営む、遠藤久道さん(えんどう・ひさみち)39歳。
3歳から祖父・貞太郎さんの背中を見て、農業に親しんできました。

そんな遠藤さんが2017年に立ち上げたのは、祖父の名前がついた「農園貞太郎」。
今では米や大根、あつみかぶなど10種類以上の作物をつくっています。
しかし・・・

廃棄される『規格外』


農園貞太郎 遠藤久道さん
「だいたいこの田んぼの7.5枚分ぐらいのくず米が出ている状況なので
3トンぐらいになりますけれども」

作物をつくるうえで、避けて通れないのが「規格外品」。
味は同じなのに、サイズや見た目が良くないことから市場に出ることなく、その多くが廃棄せざるを得ません。
農園貞太郎のつくった米のおよそ3%が「くず米」で、
規格外となっています。

農園貞太郎 遠藤久道さん
「悔しいですよね、収穫のために日々の工程を行なっているので
何とも言えない気持ちになるので、(未利用資源を)救いたいと思いますね。」

廃棄される作物をなんとか生かしたい・・・。
遠藤さんは、今年1月、「庄内アグリビジネス研究会」を立ち上げ、
農業だけではなく、大学や、食品加工業、ベンチャー企業など、
様々な分野の研究者や専門家と連携を図りました。

そこで生まれたのが・・・

アップサイクルで『規格外』を『価値あるもの』に

農園貞太郎 遠藤久道さん
「地域で出来たものを利用してアップサイクルすることがミソになると思います。
(未利用資源を)価値あるものに変えていく」

アップサイクルとは、本来廃棄される商品にデザインやアイデアなど
新たな付加価値を付けてアップグレードしたものです。

遠藤さんが手始めに行ったのは大根のアップサイクル。
農園貞太郎では、毎年2000トンの大根をつくっていますが、
その5%、およそ100トンが規格外品となっています。

その大根を原料に、野菜や肉に合う大根ソースの開発や
大根を粉末にして練り込ませたビスケットバーをつくり、
廃棄予定の100トンのうち20トンがアップサイクルされました。

こうしたアップサイクル商品を開発することで、
10年前は25%だった規格外品の割合を現在では5%にまで減らすことができました。

規格外品のさらなる活用を目指す遠藤さんには、新たなビジョンが浮かんでいます。

アグリカルチャーで衣・食・住に波及効果を

農園貞太郎 遠藤久道さん
「衣・食・住に関わる部分でアグリカルチャーが中心にありながら
(それぞれに)波及効果をもたらしていきたい。
住・住まいを形作るアグリカルチャーという事で『除菌ウェットティッシュ』の開発をしている」

いま、農園貞太郎が岩手県の企業と共同で進めているのが、
つや姫のくず米と規格外のサクランボを使った除菌ウェットティッシュの開発です。

くず米とさくらんぼを蒸留することで抽出されるエタノールを除菌ウェットティッシュに使い、その過程で出た蒸留かすを鶏や牛のエサにするという、100%循環のアップサイクルシステムです。

生産量のおよそ5%から10%が規格外品となるさくらんぼ。
この日も、地域の農家から規格外のサクランボが運ばれてきました。

農園貞太郎 遠藤久道さん
「これで5kgぐらいですかね」

未利用資源を活用したアップサイクル商品が増えれば、
農家の収入増加にもつながるという遠藤さん、除菌ウェットティッシュの開発に期待を寄せます。

農園貞太郎 遠藤久道さん
「蒸留することで濃縮されて商品がかなり多く製造できるメリットがあるので
今後の要素としては面白いかなと思います」

実は遠藤さん、アップサイクル商品の開発に取り組むのには
規格外品を何とかしたいという思いの他に、もう一つ理由がありました。

農園貞太郎 遠藤久道さん
「農業者人口が毎年9万人減っている事実があるので。
持続可能な農業はもちろん、いろいろな企業の取り組みが求められる中で
農業もいろいろな取り組みをしていかなければならないという思いが
私の中にありましたので」

農家のなり手不足や後継者問題など、様々な課題がある中で、
新たな農業の形をつくりたいと遠藤さんは話します。

農園貞太郎 遠藤久道さん
「農業の可能性ってとてつもなくあると思うので、
地域にいろいろな連携企業や人を呼んで、化学反応が起きて、
農業でありながらいろいろなものが出来上がっていく構図。
そうしたアグリテック都市が庄内で出来上がれば、
より一層農業界が盛り上がるのではないかなと思っているので、
その構図をいち早く作りたいなと思っています」