知人の女性に性的暴行を加えてけがをさせた罪に問われ、一審で無罪判決を受けた男性の控訴審判決で、名古屋高等裁判所金沢支部は13日、一審の無罪判決を破棄し懲役7年の判決を言い渡しました。
この事件は2020年、富山市内のホテルで当時大学生だった男性が知人女性に性的暴行を加えけがをさせたとされるものです。
一審の富山地裁は「女性は当時の記憶があいまいで、大声で助けを求めないなど不自然な点があり『性行為に同意していない』とする証言には合理的な疑いが残る」などとし、無罪判決を言い渡しました。
被害女性の意見を代読:
「助けを求められなかったし、逃げられなかったということが全くわかってもらえませんでした。世の中の認識が自分の思いとずれていることを強く感じました」
この判決に対し、富山県内の市民団体「 “性暴力のない社会” をめざす会」は、被害女性の行動はいずれも性犯罪被害者特有の心理からくるもので、十分合理的」だと指摘。控訴審では性犯罪被害者への正しい知見に基づいて信用性を判断してほしいと署名や街頭で訴えてきました。
検察が控訴して開かれた控訴審。男性は「女性が抵抗しなかったことや、行為に協力的な様子を見せていた」と、改めて無罪を主張していました。
13日開かれた判決公判で名古屋高裁金沢支部の山田耕司裁判長は「被害者女性が性的行為に同意していたとはいえず、一審判決は明らかに不合理」などとして一審の無罪判決を破棄。懲役7年の実刑判決を言い渡しました。
弁護人は不当な判決だとして、上告について「被告本人と相談して決める」としています。
これまでの強制性交罪、準強制性交罪では「相手が同意していない」だけでは成立せず、「相手が暴行や脅迫をして行為に及んだ」ことや、酒を飲ませるなど「抵抗できない状態につけこんだ」ことを証明する必要がありました。
これまで被害者は「実際には恐怖で体が硬直して抵抗できない」などと訴え、この要件によって性被害が犯罪として認められにくくなっているとして、成立要件の見直しが求められてきました。
そうしたなか、13日から性犯罪の規定が大きく変わることとなりました。これまでの法律に替わって新たに施行されるのが「不同意性交罪」です。
この法律は罪名について、現在の「強制・準強制性交罪」から「不同意性交罪」に変更し、同意がない性行為は犯罪になり得ることを明確にしました。
罪の成立に必要な要件は、これまでの暴行や脅迫のほか、恐怖でフリーズ状態になった場合や、教師と生徒など社会的地位の影響があった場合なども明記され、こうした行為によって被害者を「同意しない意思を表すことが難しい状態」にさせた場合は、罪に問われることになります。
「同意のない性行為」をより幅広く、具体的に示し、犯罪と認める「不同意性交罪」。性犯罪や同意に関する社会の声が一定程度反映されたといえそうです。