パーソナリティー障害を患い“失声症”の48歳の女が住宅を放火した罪に問われた裁判。弁護人が「“わざとではなかった”それは心からの真実の叫びと言っていい…無罪判決を求めます!」と力強く述べると、女は額に手をあてて涙を流しました。

そして裁判長から「最後に何か言いたいことがないか」と問われると、女は、筆談で…。

おととし11月、富山県高岡市京町の自宅を放火し、隣接する2棟の住宅に延焼させた現住建造物等放火の罪に問われている越前寧美被告(48)。

きょうの裁判もこれまでと同じように黒いスーツにメガネをかけ、髪を束ねた姿で法廷に現れました。

これまでの裁判で越前被告は、事件の1か月前、唯一の心の拠り所だった愛犬「ハグ」が死に、新しい犬を買ってほしいと両親に頼みますが、近所の人に反対されたことで、ストレスが限界に達したという証言をしていました。

そして越前被告の精神鑑定をした医師によれば、越前被告は“情緒不安定性パーソナリティー障害”を患っていて、ストレスが限界に達したことで「火のついたマッチを物置に投げ入れるという“行動爆発”を起こした」と分析されていました。

裁判の争点は、“情緒不安定性パーソナリティー障害”が事件に与えた影響、つまり放火の危険性を認識していて犯行に及んだのか、あるいは障害によって危険性を認識できていなかったという点にあります。

きょうの裁判では、検察官と弁護側の主張が真っ向から対立しました。

検察側は、「パーソナリティー障害により、“行動爆発”を起こしたからといって、自分の行為や危険性は認識していた」と主張。

「飼い犬が死に、新しい犬を飼えなかったという犯行動機は極めて短絡的で酌むべき点はない」などと厳しく指摘。懲役5年を求刑しました。

一方の弁護側は、「被告は行動爆発により、洞察力や現実検討力が衰退し、火が建物に燃え移ることを予想できなかった」と述べ、「検察官は放火罪についての立証責任を果たしておらず、刑事責任を問うなら罰金刑の出火罪にあたる」として無罪を主張しました。

声が出ない越前被告(48)の思いを代弁し、弁護人が強い口調でこう述べました。

越前被告の弁護人:
「“わざとではなかった”それは寧美さんの心からの真実の叫びと言っていいと思います。放火の故意はない!弁護人は無罪判決を求めます!」