富山県の新年度予算案で見送られたものがあります。資材の高騰で計画そのものの見直しとなる富山県武道館に注目します。
築50年以上が経過した県営富山武道館。柔道や剣道をはじめ、様々な武道を学ぶ人たちの練習の拠点となっていますが、老朽化が進んでいて、バリアフリーへの対応やエアコン設備もありません。

付き添いの母親:
「冷暖房がついていたらいいかなとは思う。熱中症がやっぱり大変なので。できれば武道とかに特化した環境で子どもたちもできればいいんですけど」
付き添いの父親:
「どうしても密になってしまうので、今年度のほとんどの試合は無観客で応援もできなかった。観客が入ることができる大きな武道館が早くできればいい」
新たな県武道館は富山駅の東側に整備される予定です。コンセプトは「武道の殿堂」ですが、ほかのスポーツイベントやコンサートなども可能な多目的施設として2027年度内の完成を目指しています。

富山県の新田知事は、これまで新年度予算案で建設費などを確保するとしていましたが。
富山県 新田知事:
「さらに上振れすることは懸念されているわけです。いったんここで少し立ち止まってみようと」

建設費は資材費の高騰で当初の約87億円から110億円近くにまで上昇。今回、予算措置を見送り、規模や機能、建設場所も含めて見直すとしました。

以前から見直しを求めていた県議会最大会派・自民党議員会はこう指摘します。
自民党議員会 奥野詠子 政調会長:
「富山市の施設整備関係に大きな動きがあって、最初の5年前の計画時点とはだいぶ様変わりをしてきた」
県武道館を建設する予定の富山駅周辺では、富山市がことし7月に中規模ホールを開館。また、富山市の総合体育館は、新B1リーグ参入を目指す富山グラウジーズのホームアリーナとして座席の増設など大規模な改修を予定しています。
自民党議員会 奥野詠子 政調会長:
「同規模の施設が近くに建築予定ということになるわけで、施設同士の役割分担をしっかり市町村と一緒に詰めていくべき」
富山県武道協議会長も務めている自民党新令和会の中川忠昭会長も。
自民党新令和会 中川忠昭会長:
「武道館機能さえしっかりあればいい。あとは令和9年度(2027年度)の完成をぜひお願いしたいと。富山県武道館という教育施設を作るならPFIは必要じゃないと私は思っています」
財政的な負担を減らすため、県は、整備から運営まで民間の活力を活かす「PFI方式」の導入を予定していますが、県議会各派からは収益性を求めるような運営方式も見直すべきとの声があがっています。

立憲民主党 県民の会 菅沢裕明会長:
「武道館だけの施設ということで建設を目指す可能性が大きくなっていると私は思うんです。私はそのほうがいいと思うんですけど、そうであるならばPFIによる建設・運営方式もこの機会に見直すほうが妥当じゃないかと思う」
県内政治に詳しい専門家は。
東北大学 河村和徳准教授(政治学):
「県は県、市は市みたいなイメージがあって、両者がコミュニケーション取れないままハコモノの話が進んでいる。急成長は望めないわけですから、県は市町村をバックアップする、足りないところを支えていくという視点で、もっとベターなものがないか考えていく必要があるし、プランの練り直しに予算をつけるというのもあっていい」
新年度予算案には、工事費が予定の1.7倍に上振れした「高岡テクノドーム別館」の工事費(24億800万円)と、魚津市に建設予定の「新川(にいかわ)子ども施設」の事業者選定費用(2700万円)が計上されています。
武道館含めこの3つのハコモノはすべて、2020年の県知事選を前に石井前知事が決めた事業。社会情勢が大きく変わる中、この「置き土産」に新田知事がどう折り合いをつけていくのか、手腕が試されます。










