20年以上、毎日続けている顔面コピーが「現代アート」になっちゃった!いまや展覧会を開く「顔面コピー」アーティストに…。障がいのある人の表現の魅力と可能性を探るシリーズ「アートミーツハート」です。

推定5万枚以上の “顔面コピー” がアートに

黙々と空き缶を集めている男性…井口直人さん、52歳です。

毎日、福祉施設で空き缶をつぶす作業をするのが彼のルーティンです。

井口さんが空き缶つぶしに精を出す一番の目的はー。

さふらん生活園 水上明彦施設長
「シールを集めるために(井口さんが)この作業をされています。シールをはがして、これをコピーしたい。このコピー撮りたがっているんです」

集めたシールを持って早速、施設の事務所にやってきた井口さん。すると…

水上施設長「押していい?行くよ」

井口直人さん「いいよ」

ガラス面に顔を押し付けると、小刻みにコピー機を揺らします。

水上施設長「どう?」

井口直人さん「かっこいいね」

仕上がったのは、この日集めたシールと幻想的に浮かび上がる顏。

水上施設長「調子に乗って僕たちも『顔入れてみたら?』って言ってみたら『やる!』っていうことで、自分の顔をコピーするっていうことが始まったんですけれども…。シールよりも自分の顔の方が好きだったというか」

井口さんが顔面コピーを始めたのは、施設にコピー機が導入された2003年。

好きなものを撮ったり手を入れてみたりと、施設のスタッフとの遊びの中から彼独自の “顔面コピー” は生まれました。

そんな井口さん、こんなところでも…。

近所のコンビニは、井口さんが朝と夕方に客として缶コーヒーを買う際に顔面コピーをすることを静かに見守っています。

井口さんが帰ると、そっと顔を押し付けたガラス面を拭いてくれているそうです。

施設とコンビニで、“20年以上にわたり顔面コピーを続けている” 井口さん。

試算すると、これまでコピーした枚数は推定5万枚以上と推定されます。