原発事故をめぐる裁判で、最高裁の判決が確定してから1年あまりが経ちました。この裁判では、福島県外の裁判も対象となりました。福島と愛媛、実に1000キロを往復しながら農業を営む原告の男性は「国の責任を認めない」とした判断に、いまも気持ちの整理がついていません。
各地で厳しい暑さとなった7月のある日、福島県南相馬市小高区の水田で、草を刈る一人の男性がいました。
「涼しい日に当たってくれれば、もっとはかどるんですけどね……」
そう言って笑うのは、農家の渡部寛志さんです。

原発事故のあと、愛媛と小高の2か所を拠点に1000キロ以上の距離を行き来して、農業を営んでいます。愛媛ではミカン、小高ではコメを主に作っています。
1時間おきに、500ミリリットルのペットボトルに入った飲料を飲み干し、また作業に戻ります。
「暑さじたいは、愛媛の方が平均5℃ぐらい高いので。こっち(小高)で熱中症になったことはないですかね。向こう(愛媛)では、避難したその年に、熱中症を人生で初経験して」