「切り捨て宣言だ」住民からは反対の声

帰還困難区域のあり方を大きく変えることになる提言ですが、馬場さんは、被災地の課題が置き去りになるのではないかと考えています。
馬場さん「これはもう帰還困難区域の除染は『はい、ここまでよ』と。特定帰還居住区域というね、その範囲を絞ってましたから。これで終わるつもりなんだなと」
また、課題が残るだけでなく、原発事故をめぐる責任の所在もあいまいになるのではないかと感じています。
馬場さん「しかも、山林活動の自由だとかね。山の恵みを享受できるようにとか。もう帰還困難区域の除染は今の計画で終わりと。残りの部分はも除染をやらない。帰還困難区域の復興除染の終了宣言。もっとはっきり言えば『切り捨て宣言』だということはもう直感しましたね」
「たとえ長い年月がかかっても、すべての避難指示を解除する」歴代の政権は、そう繰り返してきました。原発事故から、まもなく14年半となりますが、津島地区で避難指示が解除されたのは、特定復興再生拠点となったわずかな範囲のみです。

馬場さん「この間、国は何をやってきたんだと。15年経ったわけだから、放射能は自然減衰はしたけれども、地域によってはまだ線量が高いですよ。やるべきことはね、私はやっぱり国策による原発事故なわけだから繰り返しね、線量調査をして実態を知らせるというのが1つ。あと1つは、除染をすればそれなりに線量が低減するっていうことはもう実証されているわけだから、総力を挙げて除染をすべき」

裁判などを通じて、馬場さんたちが求め続けてきたふるさとの全面的な除染は、復興に不可欠なだけではなく「汚したものはきれいにする」という、事故の責任を明確にするものでもあります。
馬場さん「(提言の)一言一言がね、政治的な文章ではない。だから非常に、知恵を尽くして表現した方針なんだろうなと思います。別な立場から考えれば、それはごまかしのための表現だから。政府のやり方がずるいと。責任逃れそのものだということをね。私はもう強調したいですね」